眠りの淵で出会う人





毎夜 眠りの淵で会う人は

私に語りかけるでもなく

私を諭すわけでもなく




きっとお城の衛兵の お役交代の儀式のように

厳かに 静かに 当たり前のように

すうっと 私の脳裏に入り込み

薄汚れたポケットの深いところから

ひとにぎり 出してきた眠りの粉を

まぶたの中に ふりまくだけ




なので私は その人の表情も見ることが出来ない

けれど毎晩 出会っているに違いない

今日も 明日の夜も

悲しい思いの夜も 心 穏やかな夜も




長いひげはぼうぼうと ごついしわだらけの老人で

背は小さく ちょっと意地悪そうかもしれないと

そんなふうに 穏やかな空想する夜は 

まぶたの裏で苦笑い しているのか

すんなり 眠りの扉のカギが開く