一歩
水曜日の雨
ことこと ナベが揺れる夕方
耳の奥でカラカラとまた 引き戸の音がする
もう慣れたけど 邪魔なんだ この音
空は黙ったままで
幾千本の雨を 地上へと 落とす
うるおいとか 涙とか 雨を見ては思うけど
雨の糸なんて 一日のページに挟むしおり程度 と
強がるクセに 開けるビールはチビの缶
たったの250ml
その一歩が踏み出せないから
いつも いつも
雨をうけて木陰から迷い出た アゲハ蝶
どこへゆくの
戻る術など知らず
でも
いま
羽ばたこうと思ったんだよね
濡れたアスファルトに鮮やか アゲハの模様
私はナベを かき回す