うつろい

高くなった雲がほこほこと

西へ西へと流れているだけの午後に

モンキチョウは 残り少ない蜜を探して

頼りなく花から花へと ひらめく



しゃがみこむ人影の周りに

夏のなきがらがよりそい

いつもの貧血 めまいに加えて

なおさら存在と空間の境界線は

見上げる午後の太陽に にじんでゆく



誰かの記憶から 私が消えるときは

なにもお知らせなどせず

辺りの空気の温度が ほんの少し下がるでしょう



そして

あなたの肌に心地よい風となり 枝先をかすめて

この秋はじめての落ち葉は

かさりと小さくごあいさつの音をたてるでしょう