地下鉄 Go

線路の暗い奥から

ひゅゆゆぅ 逆風が吹いてきた

ホームに立つ人影を引きよせる

今朝の夢へ 戻れ 戻れと



間を置かず急接近

ふたつの黄色いネコの目が

夢心地のぼんやりさんに 一瞥 

くれたが それにも気付かず

「お下がりください」

びゅゆゆゆゆぅ



髪の毛も紙袋も吹き飛ぶ 強い向かい風

眼の上の悶々も 眼の端の水滴も

吹き飛ばし 吹き払い

みごと しなやかにホームに滑り込む



ああ 翻弄される乗客の列の上には

昇華されてゆく出勤前の想いをのせて

いく本もの渦が垂直に巻き上がる

もっと もっと吹いて

このままずっと 身体中で風を受けていたい

地上はるか下の澱んだ空気をかき混ぜて

知ってか知らずか 繰り返される

無表情なアナウンス

「お下がりください」 「お下がりください」