氷の海を渡って吹く風に
墨色の樹木たちは 目を閉じてじっと寄り添う
重くのしかかる厚い雲に耐えかね 薄目をあければ
相変わらずに荒涼たる この果ての世界
次に目を開けた時には 春のカケラを宿した薄日が
雲と空の隙間からきらりと ひと時 氷の粒を照らす
そんな夢を見た気がする
さく さく と
霜柱 踏みつけ誰か歩いてくる音が
でももう 目は開けない
土中に 置き去りにされた記憶が 風のすすりなく声を
まだ覚えているだけなのだ
私はもう 朽ちてカタチなど ない