カゼノトオリミチ




バイオリンの調べは するりと耳のこちらから

透明な壁のむこうへ 次々流れて通り過ぎる

時もかまわず チクタク

よそゆきの調べのように流れていって



ばかなことばかり、と 軽く笑ってもらえたら

突き詰めて 緊張感で張り裂けそうな

コトバの引き出しは するする開き

風に吹かれた砂山のように 舞い散り

どこかに消えてゆくかな



忙しいふりして早足で歩こう 

目の端からちぎれては 散らばる湿り気を

街のそこここに撒き散らして 知らん顔しよう

春の初めの街は ぼんやり もやに包まれてるから

ひとりぼそぼそと歩いていても

誰にも 気づかれることもない



望まなくても生まれる思いは

それでも 私の分身だから

そおっと知らん振りして

カゼノトオリミチに 捨てて歩く