夕方飛行
 
 
 
 
 
わたしが手を広げたら

ふうわり からだが浮かんだ

目の下には うすむらさきの夕もや

 

 

つめたくて細かい氷の粒が

からだに当たって

粉雪の中にいるようだった 

ぬれそぼった羽をふるわせると

私のぬくもりで融けた

氷の粒がガラス玉のように

すこしきらめき 落ちていった

  

 

ひとりの飛行

うすむらさきの夕もやが

灰色の夜に変わるのを

見送った

 

 

もう帰らなくては

丸い目をしたあの子に

ごはんを あげなくては

 

 

ベッドの上に とばりがおりて

乾いたくるぶしを こすり合わせる

わたしを見上げた

つぶらなふたつの瞳には

永遠のたそがれがうつる

 

 

いつか 帰り道も

丸い目をした毛玉の子も忘れ

羽が 夕暮れ色に染まるまで

太陽を追いかけてゆく

そしてやがては ちからつきて

うすむらさきの夕もやの中へと 散ってゆけたなら