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キウイ |
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耳の後ろに空けた 小さな通風孔から 風の音がする 乾いた砂のニオイと 海辺に吹いた歌を 真似てささやく テーブルの上のキウイとワタシ 鮮やかなミドリの断面 銀色のナイフにしたたるしずく ささくれを舐めながら 砂浜にゆれる枯れ草の音に 耳を澄ます このまま 甘酸っぱい香りに包まれて お行儀よく皿に並んだ キウイの輪切りと一緒に過ごす 灰色の午後 ワタシは少しだけ考えるふり だけど本当は 指についた砂粒といっしょに あの海辺に帰りたいだけ 例の通風孔から届くのは 遅れてきた連絡ばかりで 小さく頭を左右に振り こぼれた砂を 耳から払い落とす
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