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土鳩 |
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2月の雨の朝 柔らかくくぐもった土鳩の声が 辺りの空気をまあるく切り取り 細く開けたお勝手の窓から流れこむ フライパンはまだ眠ったまま ヤカンに水を入れ 眠い目に パチパチと点火の音がしみる シンクに放り込んだ山盛りのお皿から 夕べの献立のニオイは 今日の始まりを私に促す そして雨のニオイ ポウポウ ポウポウ 丸い目をした優しい土鳩の歌は お勝手のシミのかたちのドアを開き 甘酸っぱい眠りの記憶へと 再びいざなう 勢い良くあがるケトルの音と 尾長の引き裂くような鳴き声に こめかみをはじかれ のろのろと 手はスポンジをさがす 電話台の上の砂時計が 音もなくすべり続け 降り積もる 新しい 今朝のワタシの抜け殻の上に
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