薄紫
 
 
 
 
 
うすむらさきの花びらが

サンダルに貼りついて 

かがんだ指先に ぽとり

 

それは秋のはじまりの雨粒か

ふいにこぼれた私のなみだ粒

 

木立の影から しとりと吹いた風に

背中から包み込まれ 私は夢心地 

すぅと 意識をどこかへ運ばれて

しばらくは 風になされるがまま

 

薄い木綿を羽織ったように

こころに 秋がしのびよる

 

はらはら散る花びらのむこうで

私を呼んでいる

向こう岸に 渡れないのを知っているのに

季節の隙間から まだこちらを覗いているのね

 

サンダルは 急ぎ足

もうこれ以上は想いの中へ進むまい

引き返す灰色の空 ぽとり涙雨

 

散らかったまま 上手く整理が出来ないから

まなざしから淡く 頼りげなく

うすむらさきの夕暮れ