名残のばら(往く秋に) …(06/02/06加筆)
 
 
 
 
 
うすねずの湿った風

名残のばらを揺らし

ツタの葉は ひっそりと衣の色を替える

 

季節の便りを

ぼんやりと聞いていた

太陽のない午後

 

ふと微かに みえない空気がふるえ

私が顔をあげると

その時を待っていたかのように

幾重もの花びらが散った

 

薄桃色が はらり はらり

さっきまで

黙ったまま首をたれていたのに

 

幾重もの花びらは

終わりの時をさとり

涙も 嘆きもなく

だまって土の上へと散る

 

私も

咲ききった亡き骸を

指先に取りもせず

夕刻へ向かう湿った風を受けている

 

西の空へ尾を引いて

飛行機の音が 低く 遠く 過ぎていった