宝石
 
 
 
 
 
 
 
夜通し降り続いた冷たい雨は

日の出前に止んだ

 

羽がぼろぼろになるまで飛び

帰り道を忘れた 季節外れの

はかない白い蝶々

 

寒い季節が来る事など

誰も教えてはくれなかった

 

明け方の冷え込みで

とうとう

並木道の濡れた路肩に 止まったまま 

永い眠りについたとき

東の雲が切れ 

朝日が顔を出した

色変わりした木々の葉についたしずくは

ちりばめられた宝石のように

いっせいに輝きだす

 

冬の使いの風が 彼女を迎えに来た

せめて

舞い落ちたイチョウの黄色の中で

蜜を探して陽だまりを飛ぶ

優しい夢を見せるため