はなびら
 
 
 
 
 
風の街を歩き耳を澄ますと

どこからか流れてくる幾千ものコトバが

 

足を止め砂ぼこりの中で何が聞こえるの

私の髪をなびかせるのは誰の手

 

さくらの花びらひとひらごとに魂がやどり

今日のこの風に吹雪となり舞う

あるものは川に散りあるものは横断歩道の上を狂い踊り

やがて

街路樹の元に咲く

ちいさなハコベの隣に留まり眠る

 

聞きなれた声がする

見たか 見たか 満開のさくらの花

この春 旅立つお前への精一杯の贈り物

 

薄茶色の風にさわさわと花を揺らす枝

幾千もの声は

遠い国に住む者たちの思いを伝える花びら達の

コトバであったか

 

私は うす灰色の風につぶやく

ありがとう