アリ
 
 
 
 
アリが右往左往 迷っている

来た道を失くして

 

今しがた 草に水遣りして

アリがつけたニオイを

私が消してしまった

 

しゃがんで 土を見ていると

湿った風が吹いてきて こずえを揺らして

サンダルのすねを なぜてゆく

 

なんだかな ほんと 

飲み込んでしまえばよかったな

一言、ふた言 なんて、

 

すっぱい後悔が 喉の奥からあふれる

いがいがのため息 いくつもついたところで

言葉はもう放たれたし

 

ざざ ざざ 

つむじ風

見上げた太陽がまぶしすぎ 

目を閉じると 言霊の笑い声

 

時の流れに 巻き戻しボタンはついていない

 

自らの歩くはずだった道を

言葉で断ち切った

おまけに

アリの帰り道までも

 

苦い思いをしています

 

2本の触覚を動かして

右往左往している

アリも  私も