夜 河を渡る





夜 河を 渡る

闇の中 風が吹く

かすかな水の匂いをうかがいながら

背の高い草の中を 進む

月を写す水鏡に導かれ

 

闇の中でも静かに

それは動いていた 川下に向かい

私は小さな舟に乗り 糸を切る

流れるまま 流されて

 

月が

今まで見てきたことを

低く語る そのコトバが

耳の中に熱く流れ込み

痛くて 泣きながら

導かれるまま 誘われるまま

今日もまた 夜 河に来た

 

東の空がアカネに染まり

水面が青く染まる頃

舟は冷たくなった無念を乗せて

まだ 船着場に揺れていた