船出




船出の時が近づくと

君はいつもより多く身震いして

ふぁさふぁさ 産毛を言わせている

 

夜ごと 鉄砲玉みたいに 壁に向かって

何度も身体をぶつけてくるから

おうちを崩さぬよう

支える方も 命がけ

 

船を出そうか

 

流した涙で出来た河には

ひとすじの道が出来ている

月が出て

せめて行く道を 美しく飾ってくれた

 

安らぎのベッドは自分で作るんだよ

自分を抱きしめて寝るんだよ

 

水面を渡る 朝の冷たい風

舟は知らぬ間に もう遠くなった