ライトハウス
氷の国から吹く夜風 かかとの音だけが あたりに響く 真っ暗な海に浮かぶ 上弦の月を道しるべに 駅から数分歩けば あの角にともし火が見える 昔 ライトハウスという小さな 木のドアのパブがあって 暗いカウンターの向こうで シャツをまくった腕が 白いカップを磨いていた 今夜もカウンターの左はじに漂着 居場所を見つけた気がしてた 初めて二人で歩いた 明るいお日様の下で 友達のアルバイト先を訪ねると 彼女は ふたり、兄弟のようだねと言った 彼は思ったより華奢で うつむいてタバコを吸う頬には 苛立ちが見えた 「こんなのは今日だけにしてな」 夕暮れがひたひたと近づいて ともし火は 小さな風に消えた ライトハウス 其の名前は 私の中の思い出になり また 不安定な船をこぎ出す 二十歳の頃 |