突然、さよならを言われ戸惑う私に

ご多幸を！　と笑って背中を向けた

さよなら、でも、ずっとまだ知り合いだから。

少なくとも、私はそう、思っているよ。

一通のメールで去っていく友（と呼ばせて）もいる。

人の別れは突然のものもあり、準備されたものもある。

あの時、ベッドで意識もうろうとした姿に

医者に詰め寄ってナゼと言えなかったのは、

何も訴えなかったのはナゼ？

黄泉への扉が開きかけていると　私が感じたから？

私には、もう助ける術などなかった。

言い訳のようだけど、救いたかった。

本当に、その姿は苦しんでいるように見えたから。

見送るのは夕方の西の空の雲ばかりだ。

月が昇れば、今日のページにしおりを挟み、眠る。

そう、今日の日付のところに。

そこまで、私の人生は進んだんだね。

目は宙をさまよっているように見えた。

本当はどうだったのだろう、

旅支度はできていたのか？　うつろな目は

深く白い沼のように黙ったままだった

私はどうすればよかったのか。

何も出来ない私は　ただ　物分りの良い人になっていた。

あの日、ベッドの上で心は、どこまで旅していたのだろう。

フルサトの山へ向かって、アカネの空を飛んでいたろうか。

あの山を背に　歩いてきた日があったんだね

そして今また　あの山へ向かって歩いていくんだね

私は行く道が安らかであるよう手を握った。

そして祈るしかない。今も閉じた唇の奥で。

メールくれたのは、本当に嬉しかったよ。

でもあなたの事、心配しています。

一人で悩んでいないのか、相談する人はいるのか。

電脳箱の向こう側は　コードいっぽんだけで繋がっている。

心拍数が下がった。

機械には、

場違いなハートのマークが可愛いらしく点滅している。

「もう本人の意識はありませんので」

ありがとうございます。最後まで、こんなに人として、

人として扱っていただいて、ありがとうございます。

ドクターにそう、言うのを忘れていた。

あなたに見送っていただいて、本当に感謝しています。アリガトウ。

私の道は、毎日は、相変わらず続いているよ。

また、メールちょうだい。

淋しくなったらメールちょうだい。

同じ空の下、息をしているじゃないの。