そして 今日が来た

 

長い夜

お前の部屋から ドスン ドスンと

寝返りの音がするたび 心が凍った

眠りの中でさえ

恐怖に 押しつぶされているのかと

 

私がバクとなり お前の夢を飲み込んでやれば

そうすれば せめて寝ている間だけは

安らかでいられはしないか

 

荷造りを急がせた日

一度だけ 私に怒鳴った 

その日以来 黙りこくったまま

食事も普通に食べた 私はおろおろと

栄養になるものを探し食べさせた

 

ごめんね

ごめんね 

こんな時代に お前を生んでしまった

悔しくて 悲しくて 

私はただ 詫びの言葉をつぶやき続ける

 

お前に母などいなければよかった

優しさなど 教えなければよかった

ぬくもりなど与えなければ

愛に迷い 遠い故郷を思い

狂気に苦しむ事もないだろうに

 

きっと帰って来いと 祈る母達の涙は

空を覆い ひとすじの流れとなり 

戦場に降る雨になる