知らない町の知らない人の中で

 

ちょっと離れたスーパーで

買い物するのがスキなのです

 

知らない町の生活を

知っているよな顔をして

この町のどこかで 

軽やかに 暮らしているように

 

さりげなく この町に住む奥さん達と

背中合わせにすれ違い

いっしょに買い物するのです

 

ほんとうは 誰もが私に無関心で

誰も私を知らないから

空気のように馴染むでしょう

 

そこらの安売りジャガイモといっしょで

私の事など

誰一人意識にないから 

惣菜売り場の立ち話

知らない人の言葉の温度を感じながら

知らない人の生活の話を聞きながら

わざとゆっくり歩きます

 

野菜を選んでいたら

後ろから いる筈のない友達に

肩をたたいて欲しいよな

欲しくないよな気がします

 

私は背中に

はりつめたガラスの殻を 背負って歩いているでしょう

声かけて 肩をたたいて 思い切り砕いて

この 意味の無いガラスの殻を

 

私は 無神経な誰かに

救いを求めて 歩いているのでしょうか

 

あの、惣菜売り場にいた人達の

ささやかで 生暖かい立ち話を

私もしたいと思っているのでしょうか

 

秋の終わりの夕暮れに

ちょっと離れたスーパーで

買い物をした帰り道

なんだか淋しくなるのです

 

今夜 私は

皆が寝静まった部屋で

ならない携帯を握りしめるのでしょうか

あの奥さん達の 立ち話の中で

笑っている 私のセリフを考えるのでしょうか