水おけに手をひたす

いつでも優しく迎えてくれる　透明な水

ガラス　ちゃわん　湯のみ

見慣れた毎日の風景

指は　その曲線を正確に覚えている

スポンジの泡と心がひとつになり

水のしぶきを飛ばし　皿を洗う

連続再生のピアノ曲が

笑うように　部屋に　ころころ流れて

私は　ぐるぐるお米をかき混ぜる

いつの間に　私もぐるぐる回りだし　

ピアノにあわせて足先が踊る

生活の中の時計は止まらない

繰り返し続く日を　やり過ごして来た

いつの間にか　チイサナつぶやきが沈殿し

心から　剥がれ落ちる

水がそれを集め　排水溝の底へと流す

その先は　何万光年遠くのブラックホール

無心の意識の下

満天の星のような　空虚のカケラが

超　高　速　で　イッタリキタリ

渦巻きが加速するよ

フライパンが黒煙を上げているのも忘れて

出口を探してあふれそうな言葉

ああ　誰か押さえて　お　願　い

爆発しないように

聞きなれたピアノも

クライマックスを迎えるころには

水道料金は無視

大量の水ですすぎ洗い

そして　何食わぬ顔で

日常は泡と一緒に流れていく

さらさらと

軽やかな水道の水に手をひたす

お米を４合ね

誰も知らない　特技をご披露

見て　水かげんはイッパツ

そしてフィニッシュ　スイッチオン

連続再生の毎日だから　

ガラス　ちゃわん　湯のみ

明日も私は台所にいる