記憶

 

ほんのわずかの時間旅行なのかもしれない。

神がいるとすれば その瞬きの間

流れ星が 右から左へ旅をする間

 

それは命が生まれ 消えるまで。

 

水中遊泳の後 裸でこの世に放り出される赤子

現世を行く切符を手にした事に

赤子の笑みは輝くのか

地球の空気を吸った その時すでに 

光と闇を心に取り込んだ赤子

 

おぎゃあと一声

それは母の胎内という宇宙への決別の言葉

 

地球の生命体として

やがて這い 立ち上がり 草と同じ

生きて 枯れ この世を去る運命

なぜ生まれたの? 魂が

この世に仮の宿を取ったという事?

なんのため? 魂のスキルを上げる為?

私には

オーロラの空を ずっと昔に見上げた記憶があるのだ

虹色の光が 夜空に舞い踊るのを見た記憶があるのだ

私の知らない空で

 

つまり

私には 私の脳の全ての記憶を
 
読み取ることは出来ないようだ

 

流れる涙は 確かにほほを伝う が
記憶のひだの何処かに

自分の知らない自分が隠れているらしい

 

ここにいるのは

一部の記憶により存在する私だけ

私はどこから来て どこに行く?

 

デジャヴ

長い旅の後 ふたたび魂はめぐるのか。

 

眠る赤子はどこを旅して

この揺りかごに辿り着いたのだろう

疲れ果て 隣でうたた寝する 若い母にもわかるまい

あなたのおなかの宇宙に宿った命

なぜこんなも愛しいのだろう

なぜ母性など あるのだろう

 

長く短い旅が終わり

いつか私も涼やかに旅立つ

 

脱ぎ捨てられた仮の姿は
 
どうぞ 焼いて捨ててしまって。

存在さえも時間さえも

そこには なかったように 

忘れてくださいね

            (過去の詩「旅路」に手を入れました)