タチアオイ

 

 

登校日なのに誰もいない校庭

門からのぞくと 職員室の花壇に

ピンクとエンジのタチアオイが並んでいた。

暑いね 近づくと 私の背よりもずっと高いよ

ここでみんなを待っているの?

 

入道雲は元気だけれど ひっそり寂しい夏休み

セミの声だけ しんとひびく

だだっぴろい校庭に ひとり

この世から 忘れ去られた小さな私

 

ありんこだって せっせと巣穴へ向かうのに

帰り道を忘れた私は もう家には戻れない

きっとずっと

タチアオイの側に寄り添っていたら

私もタチアオイになるんだわ。

 

誰も私に気付かなくて 新学期が始まって

秋が来たら枯れてしまうんだわ。