風の魔法


その人は

風の音を聞いているように

立ち止まった 全身を耳にして

 

はにかむ横顔も 決して気弱でなく

むしろたくさんの引き出しから溢れるものを

そっと 両の手のひらで 

ムネにおさえこむようにして。

 

あなたを真似て 風の音を聞いてみる

立ち止まり 大きな木の下で。

ゴォ と私を通り過ぎた

桜と桃とこぶしの花びらが舞い上がり

砂色の風の彼方に聞いた チイサナ声は

私を呼ぶ あなたの声だったのか

それは 一瞬の 風の魔法か

 

あなたの心を細かくちぎって

そっと 飲み込みました

ずっと 忘れないように

 

その、悲しい遊びをさせたのは あなた

私の耳に ささやいたのは風