なぜ?


たくさんの言葉をつむぐ口は

脳みそから湧き出る思いを

ろ過するどころか 腐らせるのか?

清水さえ 言葉にすれば 泥水になる

「最上の言葉? これが?」 耳の奥で繰り返し問う。 

 

私は言葉をつむぐ役を 誰からも言い使ってはいない。

 

架空か空想か かすみか雲か。

にじみだす言葉を

ひたすら記す 

しかし理由はない、湧き出るから。だ。

冬の朝のため息のように 

白く 空気に溶け出し 消えゆくとしても。

 

夕暮れから夕闇に流れ込む ナス紺を

通りの向こうに描かれた アカネを

湿った風が 遠い国から連れて来る季節を

振り向いたミケ猫の瞳に宿る 光りを

 

伝える必要は 無いかもしれない。

 

くちびるに乗る言葉 みな風に散る

落ち葉をかき集めるように それをとどめる作業をしている

ひとりよがりだとしても。 

なら書かなければいい。のに。