旅路


 

ほんのわずかの時間旅行なのかもしれない。

いるとすれば神の瞬きの間

流れ星が 右から左へ旅をする間

それは命が生まれ 消えるまで。

 

現世を行く切符を手にした事に

赤子の笑みは輝く

裸で放り出された その時すでに 

光と闇を心に取り込んだ。

やがて這い 立ち上がる

草もまた同じ。生きて 枯れる。 

この世に仮の宿を取る 魂をみがく為か

 

オーロラの空を ずっと昔に見上げた記憶

虹色の光が 夜空に舞い踊るのを見た

私の知らない空で それは生まれ、消えてゆくはず。

私は私を把握していない ずっとそんな気がしていた。

流れる涙は 確かにほほを伝うが

記憶のひだの何処かに

自分の知らない自分が隠れているようで。

 

デジャヴ 魂はめぐる。 

眠る赤子はどこを旅して

この揺りかごに辿り着いたのか

隣でうたた寝する 優しい母にもわかるまい

 

長く 短い 旅が終わり

いつかあなたが 涼やかに旅立つ日

脱ぎ捨てられた仮の姿に 

私は暖かな涙を流すでしょう。

 

私もまた旅をする。その先の旅程も知らぬままに

 

この世を卒業してゆく その日まで。