私のしてきたこと

私がここまで来たとして

　風にふかれて　空を見る

すれ違った石仏（いしぼとけ）

　暑い　とも言わず　寒い　とも言わず。

梨の実が足元に落ちる　あとは

朽ちて土にかえるだけ

山道を歩けば　石仏が微笑んでる

「これからどこまで行くのかい？」

後悔も発見もつぶやきも　私だけのチップに記憶され

個体が失せれば　用はなくなる

扉が開かれた時　この世に放たれ　自己認識し

（チップに挟んだ紙が引き抜かれた時）

それからここまで来たとして

手のひらをガラス窓に当てて考える

形なんか　のこんなくていいけど。

『ある人の話』

ある人が生まれました

そして　生きて　死にました。終わり。

明け方の冷たい空気にはらりと散る

白い花びら

誰も知らぬが　重ね合わせたひとひらずつが

静かに見送っている

せめて　去るときは　そんなふうに　きれいに。

そして　願わくば　跡形もなく。