告げるもの(伝えるもの)


 

あなたに伝えるものは本来ならば

何もない ほんの戯言と初めに伝えておきます。

私は悪い人間だから 良いことなどはとても言えません

戒めの言葉も 理想の言葉も たくさん知っている。

しかしそれを実行する事は とてもとても大変です。

実行するに当たっては

失くすものがたくさんあり、

捨てるものもたくさんあります。

そしてそれらは皆、不要な俗物だという事も知っている。

でも

自分でも

なぜだか判らないが

それが惜しいのです。

俗にまみれていなければ 不安でならない。

ほんの少しも 人に分けてあげるのが惜しい程。

するりと衣を脱ぎ捨てて 何もまとわず海へ飛び込み

手足を広げて泳いでみたいと 私自身、思います。

お風呂のお湯では手を広げ 青い海に焦がれます。

でも

信じるものに向かって進みなさい、とは言えないし、

辛くても立ち向かえ、とは言えません。

少しでも得をしなさい、それがあなたの幸せになる。

金儲けを。 プラスの計算を。

マイナスは自分を不安にする。

人を踏み台にしなさい。 人に譲ると自分が損をする。

弱さと恐れは心の中にしまい、決して人に見せてはいけない。
 
出かける時には 心を被うベールを忘れずに。

夜にはシャワーで 後悔とざんげの涙を洗うこと。

そして朝には庭を掘り 日々、生まれる「真実」と共に

夕げの残りをほうり込み 土をかけて埋めること。

あかね空を見上げ 優しい気持ちになるかもしれない。

芽吹きの風 ふるると心が揺れるだろう。

けれど その気持ちは一時のもの。

そうです 今を生きなければ。

広げた手のひらには血が流れ 脳からの指令で体が動くではないか。

夢の中に生きているわけではない。

今を生きる事。

これが唯一、私があなたに告げるもの。