風の唄


風をまとい前を歩く

大きな影に 私の影を重ねてみた

淋しくて コートの裾に触れたい 

 

「雪になりそう」  いや

「さよなら」と言ったのかもしれないね。

灰色の空にカモメが数匹 私も遠くへ飛びたいよ 

息苦しいこの場から。 今すぐ 風に身体をさらわれて 

 

ポケットの中に 小さなお守り

夏にあなたがくれたキャンディ。

なのに 待ちぼうけの駅舎。 書き捨てた長い手紙。

別れ意識しながら 積み重ねる日々。

私があなたにこだわる理由 わかっている ふりだしには もう戻れないから。

 

人気ない港を一列で 埠頭の端まで歩く

逆立つ波 ボート 

投げ込まれたブイ ゆられ 揺られて。

ずっと解けない疑問がひとつ。 宙ぶらりんの凧の糸、

切りたいの? 切りたくないの?

オレンジ色の夕暮れが終わり 遠くはもう藍色で見えない。

 

「私が男なら」 笑っていたね

「握った小石は消して離さない。」

苦笑いになったね。

あんなに大きい背中が 急に小さく見えたよ

カラクリが見えた気がした 積もった気持よ風に散れ

足の指が冷たくて 寒くて 寒くて、

もう どうでもいいと思った。

早く家に帰りたい

まるで世の中 色を失ったように 決着のついた日。