幕切れ



あなた 私が来なくても がっかりしないで   

雨のしづくが 頬におちたら   

男は恥ずかしいものでしょう?  

 

クリスマスのイルミネーションを   

見上げるフリで払いのけて   

いつもみたいに格好よく   

交差点で行き交う にじんだ赤と黄色の車のライトを   

あなたはもう 何回見送ったろう   

 

あの地下鉄の階段を上がったところで 立ち止まり    

チョット手をあげて合図 身だしなみを整える   

そうして 信号が青に変わるまで   

人ごみの横断歩道のそっちとこっちで 見つめあったものだけど。
   

 

なぜだかグラスが心で砕けてしまったから   

修復するまできっと会えない それはもう ずっと会えない事。
   

 

あなたは悪くない 私のせいだと    

自分を責めるフリで キレイに終わる   

最後の幕を引く役は 私にやらせて。    

きっと 生きている限り 私は私をかばい続ける   

そして私は いつまでも美しい詩を書き続ける
   

 

雨のたそがれ時   

車のライトが 眉間に寄せたしわにも まぶしいでしょう?   

こんな寒い夕暮れは 自分で自分を暖めます。   

あなたの優しさは じゃまになる。 ごめんなさい。   

 

信号が青に変わり   

色とりどりの キャンディのような傘の波が 忙しく交差する   

けれど そこに 私は現われないから    

どうぞコートの襟を立て   

いつものように格好よく 暗いカウンターでタバコを吸って。
   

 

離れた場所で 今日の日付の変わる頃   

二人して 穏やかだった日々を思い出すのか。   

でも 「何故来なかった」なんて 電話しないでね。   

 

幕はもう 私が引いた。   

あなたは ステキに背中を向けて ゆっくり舞台のすそへと 歩いていって。