• 平成20年4月からのリース税制


<制度の趣旨>
 平成20年4月からリース会計基準が改正されました。旧制度では、所有権移転外ファイナンスリース(※1)により資産を賃借していた場合、原則としては売買取引に準じて処理しなければならなかったのですが、例外として賃貸借処理が認められていたため、ほとんどの企業が例外処理である賃貸借処理をしていました。これを利用すると、事務処理が簡便になること、負債が増えないため財務指標に影響がないことなどの利点がありました。


 しかしながら、リース契約は、ほとんどの場合、途中解約が認められず、リース契約を解除した時、その残ったリース料を一括して支払わなければならないなど、未払い分のリース料は実質的には負債としての性格を有しているということが問題視されています。また、営業活動において利益を生み出すことに利用されるリース資産が貸借対照表上表示されないという点も問題があると考えられます。その問題を解消する為、今回のリース会計基準の改正の運びとなったわけです。


 ただ、今回の改正において、中小企業の会計に関する指針より中小企業(※2)はその適用から除外されています。つまり、これまで通り例外処理である賃貸借処理が認められています。もちろん原則は売買処理ですが、絶対に売買処理により処理しなければならないというわけではありません。ただし、消費税に関しては、リース契約時に課税仕入として一括して計上しなければならなくなりました。後で詳細を述べますが、これは原則処理も例外処理も等しく適用になります。中小企業だからといって、今回の改正で何の影響もないわけではないので注意してください。


※1  ファイナンスリース取引
ファイナンスとは『金融』の意味。
実体としてリース物件に対する融資としての性格が強いリース取引


※2  中小企業の会計に関する指針
この指針の適用をうける企業は、今回のリース税制から適用が除外される対象となる企業が規定されています。対象の企業は以下の(1)・(2)を除く株式会社とされています。
  (1) 金融商品取引法の適用を受ける会社並びにその子会社及び関連会社
  (2) 会計監査人を設置する会社及びその子会社



<制度の概要>
 今回の改正は、所有権移転外ファイナンスリース取引と認められるリース取引においては、一切、賃貸借処理を認めないとした点にあります。旧制度では、リースの性格をリース会計基準に照らし合わせそれが所有権移転外ファイナンスリース取引に該当するものであったとしても、注記することで賃貸借処理を認めていました。しかし、今後はこういった処理は認めず、一部の例外はあるものの売買処理に準じて処理を行う必要が出てきます。この一部の例外の一つが先ほど述べたように中小企業です。今回は中小企業のリース税制にしぼって、今回の改正点について説明していきます。



<オペレーティングリースとファイナンスリース>
 企業がリース契約を結ぶ際に、その契約の条件により、オペレーティングリース取引(※)とファイナンスリース取引とに分類されます。オペレーティングリース取引であれば、その処理は賃貸借処理によることになります。ファイナンスリース取引であれば、その処理は原則的には売買処理によることになります。その分類の基準は


・中途解約不能


・フルペイアウト


ということになっています。


 まず、中途解約不能についてですが、これは、契約上解約不能期間が存在するかということのみならず、解約によって違約金や規定損害金が発生する場合も、中途解約不能であると判断される可能性があります。


 次に、フルペイアウトです。フルペイアウトとは、その資産により得られる利益を全て受け、またその資産の使用に伴って生ずる費用・損害などの支出を全て負担することをいいます。フルペイアウトかどうかの判定基準は、税法上と会計上で微妙に異なっていますが、中小企業、特に消費税の課税仕入額を考える上では、税法上の判定基準が重要となります。今回は混同することを防ぐ為に税法上の判定基準のみを記載します。


※ オペレーティングリース取引 

オペレーティングとは『運用』の意味。ファイナンスリース以外のリースを言う。



<フルペイアウトの判定基準>
 フルペイアウトの判定基準は税法上原則として以下のようになっています。この式を満たせば、フルペイアウトであると判定されます。


  リース料総額>資産の取得に通常要する費用×おおむね90%


再リースの取扱い


 再リース取引で、再リースが確実に行われる場合はその期間及びその金額とも判定基準の中に含まれます。これは、以下の所有権移転と所有権移転外の判定においても同様です。



<所有権移転・移転外の判定基準>
 先に述べた条件でファイナンスリース取引と判定されたもののうち、以下の4点に該当するものは所有権移転ファイナンスリース取引となります


1.所有権が移転する契約になっているもの


2.割安購入選択権が付されているもの(ただし、著しく有利な価額の場合)


3.特別仕様のリース物件


4.相当に短いリース期間のリース


1と2に関しては契約上の問題となります。2のカッコ書きにある著しく有利な価額とは、法定耐用年数で定率法により計算した場合における未償却残高未満の価額(未償却残高が取得価額の5%相当額を下回っている場合は5%相当額)のことをいいます。この金額で買取が行われる場合は、自己所有の資産として処理することになります。


3は、ユーザーとなる企業の用途のためにリース会社が特別な仕様が施しているために、そのリース物件をリース会社が他の企業に貸与・売却できなりリース物件のことです。


4は、リース資産のリース期間が相当に短い場合で、リース期間を法定耐用年数よりも短く設定することで、減価償却よりも早く損金として処理することが出来ることになります。これだと課税上の弊害となってしまいます。そのため、こういった場合は自己所有の資産と同様に処理をし、通常の減価償却資産として処理をすることになります。具体的には、以下の判定基準により判定します。



法定耐用年数が10年未満の場合

 リース資産の法定耐用年数 × 70% > リース期間

法定耐用年数が10年以上の場合

 リース資産の法定耐用年数 × 60% > リース期間



<リースの種類による消費税の取扱いの違い>
 リースの種類により消費税の取扱いがかわってきます。所有権移転ファイナンスリースは当然、契約時に一括控除ということになります。所有権移転外ファイナンスリースに関しては、以前はリース料支払時にその都度、消費税を計上する処理をしていましたが、今回の改正により、上記の所有権移転ファイナンスリース取引と同様に契約時に課税仕入として一括控除ということになります。会計上、リース料は賃借料として処理していくことになりますが、今までの課税処理から不課税処理となります(税務上は減価償却費として考えるため)。また、オペレーティング取引の場合は、今までどおり、リース料の支払時にその都度消費税を計上することになります。計上する消費税額は、リース料総額を計算の基礎とします。契約書上に保険料や支払利息が明示されている場合は、それを除いたリース料総額を計算の基礎とするとされています。



<中小企業においての注意点>
 今回の改正において、中小企業が一番注意しなければならないのは消費税になります。一括計上とその都度計上では消費税額に大きな差異を生み出します。そうなると、その前段階のオペレーティングリース取引とファイナンスリースの判定は消費税の控除額の算定上とても重要となってきますので、これからは、契約時もしくはその前に、これがファイナンスリース取引なのか、オペレーティングリース取引なのかの判断をしっかりと行う必要がありそうです。また、消費税の課税の特例(簡易課税制度)を適用している場合には、一括控除の恩恵が受けられない事態になります。リース契約が高額又は数多くなると考えられる場合は、原則が有利(還付または納税が少なくなる)だと思われることも考えられます。



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