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ガウリイはケナを朝一番に魔法医に連れていこうとしたのに、生憎留守で診察をして貰えなかった。
ゲイルの言った通り、翌日ガウリイの帰還を聞きつけた人々が見物方々屋敷に押し寄せた。 もし兄達の言う通りに婚約しておかなければ、恐らく朝から晩までガウリイは女どもに迫られっぱなしだっただろう。 横で見ていてケナが呆れていた。 「いかに昔悪行を繰り広げてたかがわかるな」 「謙遜しなくて良い。ガウリイがモテるのは分かってるから」 ケナあまりその話はしたくないらしい。 屋敷から客が引き上げたのはすっかり日も暮れてからだった。 家中を巻きこんの大騒ぎの幕がとりあえず降りた。 じゃあと、ケナが自分の部屋に引き上げ掛けた。 ところがドアが締まる寸前にガウリイが部屋に滑りこんで来た。 「なに?」 「いや。コミュニケーション」 「ふん」 そういうとケナはガウリイの手を握って軽く振った。 「おやすみ」 「で?それだけ」 「そう。それだけ」 「んなわけないだろ?俺は結婚しても夫婦隣り合った部屋で平気で寝られる男じゃないんだよ」 言うなりガウリイはいきなりケナをベッドに押し倒した。 「仕事のようなもんだって言ったじゃない」 「それは兄貴。俺は言ってない。 少なくともちゃんと結婚する形を取るなら、見せ掛けだけにしておくつもりはないね」 「ちょっと待ってよ」 慌ててバタバタするケナを急に離すと、ガウリイは頭を抱えた。 「すまない。いきなりこんなことするつもりはなかったんだ。 あんまりケナが取り付く島もなかったから」 「そう?」 「昼真っから必要なこと以外しゃべらなかっただろう?」 「あ、ばれてた?」 「あたりまえだ。見えない分敏感なんだよ」 「ごめん」 「話ぐらいちゃんとさせてくれよ」 わかったとケナは頷いた。 ぽんぽんとケナの手に自分の手を軽く重ねるとガウリイはぽつりぽつりと話始めた。 「好きな奴がいた。自分の命と引き換えにしても良いくらい大事だった。 守りたかった。生涯を捧げるつもりだった。けれど、目がだめになった。 あいつは抱えているものがとてつもなく大きくて重い。 俺のこの目ではあいつの足手纏いにしかならない。 だから別れた。いや、正確に言うと黙って置き去りにした。 もしこの目のことを知られたら恐らく自分に罪の意識を感じて、俺の傍にいるだろう。 それじゃだめなんだ。 俺達は対等でなければならない。どちらかがどちらかの重荷にはなれない。 だから別れた」 「それでいいの?」 「良くはない。けれど認めて受け入れる。これが最善だと思う」 「で、あたしと結婚するわけ?」 「虫のいい話だと言うことは分かっている。けれどケナとは目がこうなってから出会った。 ケナは俺の今を理解してそのままを受け入れてくれる。 こうなったからには、もう誰かに人生を背負わせることなんてできないと思っていた。 けど、背負うんじゃなくて傍を歩いて欲しいと望むことはできるんじゃないかとね」 「あたしに傍を歩いて欲しい?」 「嫌でなければ」 「嫌じゃあないけど」 「けど?」 「困った」 「そうだろうな。つい何日か前までは俺はお前さんが男だと思ってたからな」 「こういう面倒に巻き込まれるのが嫌だったから」 「面倒か」 「でもまあ、乗りかかった船だしね」 「じゃあ、結婚するのに賛成か?」 「いや・・・とりあえず婚約で止めてくれない?いきなり気持ちなんて切り替えられない。 少なくともあんたがここに慣れるまでいるよ。防波堤にもなってあげられるし」 「その間に治療も受けられるしな」 「交渉成立だね」 「おう」 そういうといきなりガウリイはケナにキスした。 「ガ・・・ガウリイ?」 「婚約者にキスして何が悪い?」 「だからそういう話じゃなかたったんじゃ・・・」 「そうもこうもない」 |