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「そうするつもり」 即答だった。 「引きとめても無駄なようだな」 「もちろん」 ガウリイはケナの横にどさりと座った。 重みでベッドが沈み、ケナの体がガウリイの方へ傾いた。 「ありがとう。いろいろ」 感謝されてケナは照れた。 「いや、好きでついて来たんだから礼を言われなくたっていいよ」 「いや、本当に助かった。お前さんがいなかったら俺はどこで自暴自棄になってたか分からん」 「色んなことあったんだね」 「まあな。これからどうする?」 親戚をとりあえず訪ねると、ケナは二つばかり宿場を戻ったところにある町の名前をあげた。 「それで?」 「働くさ」 「何をして?」 「まだわからない。食べていくくらいはできる」 「淋しくないか?」 「そりゃ淋しいさ。でも慣れてる」 「慣れるもんか?淋しいのって」 「それ以上期待しなければ慣れるさ。誰かに必要とされたいとね」 「でも、俺はお前さんを必要としてる」 くすくすとケナは笑った。 「ガウリイ。それ素面で女の子に言ったら愛の告白と間違われるよ」 「う〜〜〜ん」 ガウリイは唸ってベッドに倒れこんだ。 その拍子にケナまでガウリイの上に倒れこんでしまった。 慌てて飛び退こうとするケナをガウリイは思いもよらぬ力で抱き寄せていた。 「愛とまではいえないけど、少なくとも俺はお前さんが好きだよ。 一緒にいて楽しいし、もし親戚のところに行くのがそれほど乗り気でないなら、よかったらここにいないか?」 「ここにいて、何するの?ガウリイの愛人にでもなる?」 「うん、それもいいな」 「馬鹿言わないの。こんな顔なんて恥ずかしくて人に見せられない」 「俺には意味ないね、顔なんて。魔法医にかかれよ」 「いや」 「なんで」 「施しは受けない。自分で治療費を稼いだら治す」 「頑固だな」 「身持ちが固いと言って欲しいな。見かえりなんて期待されても困るし」 「俺の好意だと思ってはくれないか。 生まれ故郷だとは言え、まだこの見えない状態には慣れない。だが慣れていきたい。 それには誰かに傍で助けてもらえるとあり難い。そうしてもらえないか?ケナ」 「要はあんたに雇われてあげればいいんだ」 「そういうこと」 「ふん。金持ちが金に飽かすわけだ」 「勝手に思ってろ。俺はケナが必要で、ケナは治療が必要だ。それでいいじゃないか」 「仕方ないなあ」 いかにも嫌そうな言いぐさに、ガウリイが笑いだし、仕舞いにはケナも笑った。 「じゃあ契約成立」 そう言いながらガウリイの上から勢いよくケナが起き上がろうとしたときだった。 びり 「きゃーーーーーーーっ!!!」 「ケナ?」 耳を劈く悲鳴にガウリイが慌てて起き上がってケナに手を伸ばした。 むにゅ 「なに?」 何か柔らかいものが手に当った。思わずそれを握ってみる。 「きゃーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」 さっきよりも大きい悲鳴が上がった。 思わずガウリイはケナの口を押さえる。それがケナをパニックに陥らせた。 「こら、ケナ。静かに。いったいなんなんだ」 そのときケナの部屋のドアがバタンと開いた。 「ガウリイ!!」 ケナの悲鳴を聞きつけた兄と兄嫁がそこにいた。 最悪だ。 ガウリイのシャツに付いていた飾りボタンが、グレースが心づくしに用意したケナのナイトドレスに上手い具合にひっかかり、無理に起きあがった為にそれが胸元でしっかり裂けていた。 おまけに見えないガウリイが手を伸ばした先にケナの胸があり、思わずガウリイがそれを掴んでしまった為に起った騒動だった。 だが、事実はどうであれ、実際開けたドアの向こうにいるベッドの上の二人をみた兄夫婦には、ガウリイがケナを襲っているようにしか見えなかったのだ。 「ガウリイ。ちょっと部屋へ来い」 言い捨てると蒼白な顔をしたガウリイと真っ赤な顔のケナをを残して、兄はくるりと踵を返してしまった。 |