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分からないというように、ケナが聞く。 「じゃあどうして別れたりしたの?」 「幸せになって欲しいからだ」 「幸せに?一緒になれば良いじゃないか」 「俺とじゃだめだ」 「どうして?」 ケナには分からなかった。 好きなら、好き合ってるなら一緒になるのが自然なはずだとケナは思っていた。 「相手はガウリイを好きじゃなかったの?」 「聞いたことはない。でも多分そうだと思う。好きというより一緒にいるのが自然だった。 それより、俺が惚れてた。真底惚れてた」 「・・・・・・・」 「おい、ケナ?」 「ああ、ごめん。じゃあなんで?」 「だから、目だよ、目」 ケナは呆れて溜息をついた。 「ちゃんと話し合った?」 「いや」 「黙って置いてきたんじゃない?」 「どうして分かる?」 「ガウリイ魘されてるから。時々。何て言ってるか言ってやろうか? 『すまない。傍にはいられない・・』そう言って女の名前呼ぶんだぜ、ガウリイ」 ガウリイは赤くなった。 確かにしょっちゅう夢にリナは出てくるが、そんなことになっていたとは。 絶句して戸惑っていると、横でケナがくすくす笑い出した。 「ケナ?」 「やっぱ本当だったんだ」 「お前・・・」 「ウソだよ。確かに魘されてるけど、何言ってるのかわかるもんか」 「大人をからかって!!!」 何時になく怒ったガウリイは本気でケナを羽交い締めにした。 「ギブアップ、ギブアップ!!」 声を上げたとたんに、ケナの力が抜けた。 「ケナ?」 返事はない。 「ケナ?」 もう一度読んでもケナは返事しない。力も抜けたままだ。 胸に手を置いて考える。 きつく包帯が巻かれているのを手でなぞってガウリイはケナが失神したことに気がついた。 「まったく巻き過ぎなんじゃないか?」 そういうと、ガウリイはボタンを外してケナのシャツをすっかり取り去ってしまうと、 気遣うように、ケナの包帯を外した。 背中に手を入れて背を浮かせると、ゆっくりと包帯を取り除く。 触れながら違和感を感じる。 どうも体が柔らかい。 二の腕も細すぎる。意識して触ったことがなかったから今まで気付かなかった。 包帯を取り除いてしまって背をなでたとき、感触が違うのをはっきり感じた。 戸惑いながら、ケナの胸に手を当てる。 胸にあるはずの傷の代わりに手に触れたのは柔らかい胸だった。 驚いてガウリイは思わず後退った。 暫く考えて、もう一度ゆっくりガウリイはケナに触れた。 頬に手を置く。 細い顎。 首筋も儚げで、そして紛うことのない胸。 手はゆっくりと体を滑りケナの秘密を暴いていく。 見えない目でもはっきりと分かる。 どうしてこういうことになってるんだろう? ガウリイは、礼儀正しくケナにシャツを着せて考えた。 あの村の連中は皆ケナが男だと言っていた。だから俺も疑わなかった。 事実霞む目で見たケナは少年の様相だった。 まだ幼いから華奢なのだと思いこんでいた。 考えても結論は出ない。 ガウリイはシャツは着せたのだが、包帯を取ってしまっていたことをすっかり忘れていた。 ケナが起き上がった気配がする。 その気配に目を向けたガウリイは何を言っていいかわからず、思わず口だけをパクパク開いていた。 開放感にケナが気付いたらしい。 「ガウリイ?」 「やあ、ケナ」 「あんた・・・・・」 「キツそうだったからな」 「ありがとうというべきなんだろうねえ・・・」 「いやあ、礼には及ばない」 「いや、そういわずに」 次の瞬間、ガウリイは小柄なケナに思いっきりエルボードロップを食らっていた。 それでも、礼儀正しいガウリイはケナに同じベッドで寝ないかと誘うことは欠かさなかった。 当然次はニードロップを食らったのだが、ガウリイはそれで怯むほど意気地なしではなかった。 その態度にケナがゲラゲラ笑った。 「理由を聞かせてくれてもいいんじゃないか?」 真面目な顔に戻って聞くガウリイに、ケナは正直に言った。 「女だとあんた嫌だっていったでしょ」 図星だった。 「でも、あたし自身がいやだってんじゃないでしょ?だから男にしといたの」 「なるほど」 「女だとわかったら旅をいっしょにするのが嫌になった?」 「いや。反って一石ニちょ・・・がふ・・・・」 最後はまたしてもケナに一発くらっていた。 二人してけらけら笑った。 「あと2日ほどだからさ、いいでしょ?ついていっても」 ガウリイは微笑んで頷いた。 「ありがとう」 心からの言葉を聞いて、ケナの顔が歪んだ。 それはまるで泣いているような笑顔だった。 |