残照
― 12 ―

作:YUMICOさん


「酷い。これ自分でやったんですか?」
「まあね」
「とにかく少しずつ治しますね。いきなりだと傷が変になっちゃいますから」
そういうとアメリアは『回復』をかけた。
「納得いく結論はでましたか?」
言われてリナは悲しそうに首を振った。
「あたしがガウリイの重荷になるってのは変らないわ。
今のあたしじゃ、これまでのあたしじゃだめなのよ。
ガウリイはあたしは欲しくないのよ。今のままではね」
「でも、結果は結果です。これからどうするんですか?」
「どうもしないわ。ひとりでやっていくのよ」

その言葉にアメリアが激高した。
「どうして諦められるんですか?
男の振りして、長い髪を切って。
わざと火傷に見せ掛けて顔を焼いて、声まで潰して尽くしたのに。
あげくの果てに、自分の代用品になって妊娠までして。
どうして黙っていられるんです?」
「いいのよ。あたしが好きでしたことだから。
とにかくなんとか故郷に帰るのを手伝いたかっただけなのよ。
でもね、傍にいるうちに欲が出たのよ。
もうちょっと親しくなっても良いかな?
手ぐらいなら触っても良いかな?
抱きついてみてもいいかな?ってね。
そんなことしてるうちに、止められなくなっちゃったのよ。
ガウリイが欲しかった。欲しかったのよ。
子供が出来ても構わなかった。抱かれたかった」

リナはぽろぽろ涙をこぼした。
アメリアは何も言えなくなった。

違う人間の振りをして傍にいればいいと言ったのはアメリアだった。
密かにガウリイの掛かっていた魔法医から話を聞きだし、アメリアはリナにガウリイの失明の可能性があることを伝えた。
始めは混乱したリナも平静をとりもどすと、ガウリイの傍にいることを考え始めた。
恐らく目が見えなくなると、ガウリイは自分から離れようとするだろう。
そんなこと許すものかと、リナは思った。
けれどガウリイはああ見えても結構意地っ張りなところもある。
大喧嘩になって亀裂を生じさせると反って取り返しがつかない。
思案しているうちに、あのパーティーでの喧嘩だった。

ガウリイに置いて行かれて、リナはすぐにガウリイが見えなくなり始めた事が分かった。
けれど普通に追って行ってガウリイに受け入れられるかどうか自信がなかった。
それでアメリアの言っていた言葉を思い出した。
全く関係ない人にならガウリイさんは冷たくしない・・・

すぐさまセイルーンからアメリアを呼びつけると、リナは自分の魔法を封じさせた。
魔法を使うと、その気配ですぐにガウリイは自分だと気取るだろう。
そして髪を切り、甲高い声を薬で潰した。
そんなこともあろうかと、リナはガウリイの斬妖剣の柄に宝珠を埋め込んでいた。
それをアメリアにトレースさせると、リナはガウリイの目的地を割り出して先回りをした。

そこそこの金額を積むと、ケナは意外と簡単に小屋を売ってくれた。
そこでリナはケナになりすまして少し過ごしているうちにあの火事が起った。
本当はここまでハデな事をするつもりはなかったのだが、たまたま類焼して小屋が焼けたのでリナは自分で顔を焼き、完全に他人になりすますことにした。
火傷の痕のおかげで、ガウリイどころか村人もころりとだまされてくれた。
とにかくガウリイを無事に故郷に送りたいと思った。

自分のことなんかどうでもよかった。
ガウリイが幸せになってくれれば良いと最後はそればかり願っていた。
思いがけぬ婚約ごっこがなければ、リナは黙ってガウリイから身を引くつもりでいたのに。

ガウリイの腕の中で、リナは蕩けた。
ガウリイは自分を抱いているつもりはないと分かっていた。
それでもよかった。
ガウリイの熱い唇が手が自分の体を触るたびに、リナは自分に嫉妬した。
嫉妬しながら、リナは自分にガウリイを刻みつけていた。
ガウリイが避妊しないのにも気付いていた。
そりゃ結婚するつもりの相手を抱くんだからそうだろう。
子供が出来たって構わない。
その子を支えに生きてだっていけるわ。
リナは健気に震えていた。

「じゃあ、解きますよ」
そういうと、アメリアはリナに向って印を結び呪文を唱えた。
リナの体に力が戻る。
けれどそれはすぐしぼんでいく。
「どのみち今は使えないわね」
「そりゃその体ですから。どうするんですか?これから」
「故郷へ帰るわ。ひとりじゃどうしようもないし。それにあたしの子供だってことには変わりないからね。親に孫を抱かせてあげるわ」
何を言ってもリナの瞳が曇らない事がアメリアには救いだった。
「じゃあ、馬車くらい手配させてくださいね」
リナは素直に頷いた。





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