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揺り起こして問い詰めたい気持ちを堪えて、ガウリイはケナに足を絡めて眠った。 こうしておけば逃げられはしないだろうという気持ちもこめて。 明日になれば、なんとかなる。 ガウリイは明るい希望を思い描いてケナを抱いて眠った。 窓から射しこむ明るい陽射しはガウリイの目には届かなかった。 気だるい体を動かして、ガウリイははっと飛び起きた。 しっかり抱き締めていたはずの女がいない。 慌てて手で探る。 だが隣のケナがいたはずの場所はひんやりと冷たく、もう既にいなくなってから時間が経っていることが分かった。 「ケナ?」 呼んでも応える声はない。 とりあえず服を探して着るだけの分別がガウリイにはなんとか残っていた。 ドアを開けて外へ出ると、いきなり兄に出くわした。 「なんだ、慌てて」 「ケナは?」 「出かけるって。なんだか大きな荷物を持ってたな。旅行へでもいくのか?」 「そんなわけないだろ!出て行ったんだよ!」 「お前昨夜相当無茶な要求したんだな」 「ゲイル!」 「冗談だよ。まさか婚約したてなのに。お前・・・捨てられたのか?」 「そうだよ」 「冗談だろ?」 「ガウリイ。ケナがこれ持っててって」 ガウリイはいきなり手に握らされたものを触って飛び上がった。 「グレース、これ」 「あら、指輪よね。どうしたのかしら?婚約指輪なのに」 「だから・・・・」 もうガウリイは泣きたかった。 どうしてこうも兄夫婦は惚けてるんだろう。 仕方ない。身内だからな。 ガウリイは問題をそれ以上ややこしくしたくなくて、屋敷の人間に聞いて周った。 話を総合すると、ケナは夜が明けてすぐ、グレースに婚約指輪を託してこの屋敷を出たと言うことだった。 それで初めて屋敷中が騒ぎ出した。 ガウリイとゲイルはケナの親戚のいるはずの町へ急いで行くと、その親戚を探した。 けれどそういう親戚は見あたらなった。 「おかしいな?」 首を捻るゲイルに、ガウリイは暗い顔で言った。 「そうだろうとも。親戚なんているわけがない。あいつの居場所はここじゃない」 ガウリイは意味がわからず首を捻るゲイルを引っ立てて屋敷へ戻ると、旅支度を始めた。 「まあ、ガウリイ。帰ったと思ったらまた、旅に出るの?」 グレースが咎めるように言う。 「ケナはどうするの?」 「ケナはいい。リナだ」 「だってケナはどうするの?」 「だからケナじゃない。あいつはリナだ」 分からず首を捻るグレースにガウリイはたたみこむように言う。 「なんでもいい。俺の半身を探しに行くんだから。止めたって無駄だ」 兄に言って、馬と馬丁を借りると、ガウリイはまた故郷を出た。 行き先は一つしかない。 そこにいけばなんとかなるだろう。 ガウリイは見えない目で未来を見つめ始めた。 |