百合と薔薇

第6話:淡い恋


作:千菊丸さん
1991年冬、フランス・パリ。

パリ中心部の広場で、人気大道芸一座「ダンデライオン一座」の公演が行われていた。
一座の踊り子・ナージャの可憐なダンスが、公演の目玉になっていた。
ナージャは今日も、華麗なダンスを舞っていた。
ナージャ・アップルフィールド。
彼女はイギリスの孤児院・アップルフィールドに預けられた、ヨーロッパ政財界御三家のひとつ、オーストリアのプレミンジャー財閥社長の孫娘なのであるが、彼女はそれを知らない。
ナージャの母・コレットとはプレミンジャー公爵に赤ん坊の頃に生き別れになっていた。
母を捜す手がかりは、母の形見の日記やドレス、ブローチだけ。
−この中に、お母さんがいるかもしれない−
母の姿を探しながら、ナージャは今日も踊り続けていた。
ダンスが終わると、観客から拍手が起きた。
ナージャは丁寧に礼をした。
その時、白いスーツを着た金髪蒼瞳の青年が、白バラの花束をナージャに差し出した。
「素敵だったよ、ナージャ。」
青年の顔を見たナージャの表情が、明るくなった。
「フランシス、パリに来ていたの!」
青年の名は、ヨーロッパ政財界御三家、イギリスのハーコート財閥の子息・フランシスであった。

フランシスとナージャが会ったのは数ヶ月前。母親を捜して一座と共に旅をしていた。
公演先のロンドンで、ナージャは買い物の途中で自動車に轢かれそうになったところを、フランシスに助けられた。その時、大事なブローチが外れた。
数日後、用事でハーコート邸にやって来たナージャは、フランシスと再会する。
ブローチと命を助けてもらった礼をするナージャに、フランシスはダンスに誘った。
星空の中でのワルツ。
それが、恋の始まりだった。


「久しぶりね・・前に会ったのは、ロンドンの時以来ね。あなたと踊った初めてのワルツは、忘れられないわ。」
そう言ってフランシスに微笑むナージャ。
「元気そうだね、ナージャ。今日は君にいい知らせを持ってきたんだ。」
フランシスは1通の封筒をナージャに差し出した。
「それ、何?」
「今夜パーティーがあるんだ。これは招待状。よければ、君に来てもらえたらって・・」
「嬉しい。」
微笑み合うナージャとフランシス。
「じゃあ、今夜ここで。」
「ええ!」
フランシスが去っていった後、ナージャは彼の姿が見えなくなるまで、その後ろ姿を見送っていた。
フランシスから貰った招待状を握り締めて。
「さてと、支度しなくっちゃ!」
ナージャはそう言うとからくり自動車の中に戻った。
今夜はきっと、素敵な夜になる。









ナージャとフランシスの淡い恋。
『明日のナージャ』本編ではナージャとフランシスの恋の行方があやふやでしたが、この小説ではナージャとフランシスの淡い恋を描いていきます。
次回は、天愛とナージャの本編でぶっ飛んでいる女2人が登場します。

Novel&Message by 千菊丸さん


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