百合と薔薇

第50話:運命の夜


作:千菊丸さん
2005年8月21日。
オーストリア・ウィーン、ハプスブルク邸では、ハプスブルク財閥社長・ルドルフの23歳の誕生日パーティーが華々しく行われていた。

「誕生日おめでとうございます。これからのあなたのご活躍を楽しみにしておりますよ。」
プレミンジャー財閥のオーナーであるプレミンジャー公爵は、ルドルフに祝いの言葉を述べた。
「ありがとうございます。」
ハーコート財閥の後継者・フランシス=ハーコートと、彼の双子の兄・キースもルドルフに祝いを述べた。
「キース、君も来るなんて珍しいね。社交嫌いで有名な君が。」
「別に、今にもこの街で飢えている人がいてるのに、食べ物を粗末にするパーティーを見たくてね。」
「このパーティーが、くだらないと?」
ルドルフとキースとの間に、見えない火花が飛び散った。
「ルドルフさん、あなたに会わせたい人がいるんです。」
フランシスが険悪な雰囲気を変えるかのように、話題を変えた。
「会わせたい人・・」
ルドルフはフランシスの言葉に首を傾げた。
キースは扉の向こうにさがっていき、誰かの腕を引っ張った。
「来いよ、ほら。」
「でも、私は・・」
キースは強引に誰かの腕を力ずくで引っ張り、扉の向こうにおしやった。
ルドルフは息を呑んだ。
「お前は・・」
彼の目の前にいるのは、4年前に自分を捨てたアルフレートだった。
アルフレートは、ルドルフに会った途端、失われた記憶を取り戻した。
「ルドルフ様・・」
思わずルドルフに駆け寄るアルフレート。
「私を捨てて、この場に来るなんて、どんな根性をしてるんだ?」
氷のような冷たいルドルフの声が、アルフレートの胸に突き刺さる。
「私は、あなた様を捨ててなど・・」
「黙れ!」
そう言うとルドルフはアルフレートの腕を振り払った。
「お前、今何してる?」
「あの事故の後、ダンデライオン一座の衣装係として働いていました。その後スカウトされてパリのブティックにいました。今は、ハーコート家の専属デザイナーとして働いています。」
「そうか・・」
ルドルフは、一度もアルフレートと目を合わそうとしない。
「ルドルフ様、私はあなたを捨ててなどいません。ずっとあなた様のことを・・」
「言い訳は聞きたくない・・」
ルドルフはそう言って、アルフレートの元から離れていった。

シュティファニーは、夫の怒鳴り声を聞いた。
ちらりと見ると、アルフレートがいた。
(アルフレートがどうしてこんなところに?!)
「奥様、どうかなさいましたか?」
バーベンブルクが心配そうな顔をして、シュティファニーに声をかける。
「いいえ、何でもないわ。」
(始末しないと・・)
ハプスブルク邸の前に、ナージャがドレスを着て立っていた。
(フランシスに伝えなきゃ・・私が愛しているのは、フランシスただ1人だけだって・・)
ナージャは深呼吸して、邸の中へと入っていった。










Novel&Message by 千菊丸さん


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