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ウィーンの病院の一室で、ナージャは目を覚ました。 (私、どうしてこんなところに・・) ナージャは先ほどの出来事を振り返ってみた。 フランシスの子を妊娠したのをわかって嬉しくて、フランシスに会おうとしたらメリーアンに会って、それから階段に突き落とされて・・。 その時はじめて、ナージャはお腹の子のことを思い出した。 私の赤ちゃんは? 病室のドアが開き、フランシスが入ってきた。 「ナージャ、具合はどう?」 「フランシス、赤ちゃんは?赤ちゃんはどうなったの?」 フランシスはナージャとは目を合わせようとはしない。 何か隠していることがあるように。 「ねぇフランシス、赤ちゃんは?」 フランシスは、重い口を開いた。 「赤ちゃんは・・駄目だった。」 ナージャの胸が、悲しみで潰れた。 「そんな・・嘘よ、嘘でしょう?」 「階段から落ちたとき、もう流れてたんだ。女の子だったよ。」 ナージャは下腹部をさすった。 5ヶ月もお腹にいた、小さな命。 だが、もういない。 ナージャは頭から毛布を被って泣いた。 フランシスはその間、黙っていた。 しばらく経ち、フランシスが再び口を開いた。 「ナージャ、僕たち、終わりにしよう。」 「フランシス、何言ってるの?!」 ナージャは信じられないという顔をしてフランシスを見た。 「君は、キースの子を妊娠してた。さっき病室でキースと擦れ違った。キース・・兄さんは君を手に入れるために君を抱いたって言った・・」 あの日、愛を交わしたのは、フランシスではなくキースだった。 ナージャは涙を堪えた。 「フランシス、嫌よ。あなたと別れるなんて嫌。」 「ナージャ、ごめん。」 そう言うとフランシスはナージャの手を握った。 「もう行くよ」 「行かないで、お願い!」 だがナージャの叫び声もむなしく、フランシスは病室を出ていった。 フランシスとナージャの縁談は白紙に戻り、傷心のナージャは病室を抜け出し、海へと向かった。 フランシスはメリーアンの嘘により、彼女と婚約する。 フランシスとナージャの縁談が白紙に。 メリーアン、許せない女です。 嘘でフランシスを騙して束縛しようとする彼女、これからどうなるんでしょうか? 次回、絶望のナージャは遂に・・ Novel&Message by 千菊丸さん |