百合と薔薇

第32話:婚約解消


作:千菊丸さん
ウィーンの病院の一室で、ナージャは目を覚ました。
(私、どうしてこんなところに・・)
ナージャは先ほどの出来事を振り返ってみた。
フランシスの子を妊娠したのをわかって嬉しくて、フランシスに会おうとしたらメリーアンに会って、それから階段に突き落とされて・・。

その時はじめて、ナージャはお腹の子のことを思い出した。
私の赤ちゃんは?

病室のドアが開き、フランシスが入ってきた。
「ナージャ、具合はどう?」
「フランシス、赤ちゃんは?赤ちゃんはどうなったの?」
フランシスはナージャとは目を合わせようとはしない。
何か隠していることがあるように。
「ねぇフランシス、赤ちゃんは?」
フランシスは、重い口を開いた。
「赤ちゃんは・・駄目だった。」
ナージャの胸が、悲しみで潰れた。
「そんな・・嘘よ、嘘でしょう?」
「階段から落ちたとき、もう流れてたんだ。女の子だったよ。」
ナージャは下腹部をさすった。
5ヶ月もお腹にいた、小さな命。
だが、もういない。
ナージャは頭から毛布を被って泣いた。
フランシスはその間、黙っていた。
しばらく経ち、フランシスが再び口を開いた。
「ナージャ、僕たち、終わりにしよう。」
「フランシス、何言ってるの?!」
ナージャは信じられないという顔をしてフランシスを見た。
「君は、キースの子を妊娠してた。さっき病室でキースと擦れ違った。キース・・兄さんは君を手に入れるために君を抱いたって言った・・」
あの日、愛を交わしたのは、フランシスではなくキースだった。
ナージャは涙を堪えた。
「フランシス、嫌よ。あなたと別れるなんて嫌。」
「ナージャ、ごめん。」
そう言うとフランシスはナージャの手を握った。
「もう行くよ」
「行かないで、お願い!」
だがナージャの叫び声もむなしく、フランシスは病室を出ていった。
フランシスとナージャの縁談は白紙に戻り、傷心のナージャは病室を抜け出し、海へと向かった。
フランシスはメリーアンの嘘により、彼女と婚約する。









フランシスとナージャの縁談が白紙に。
メリーアン、許せない女です。
嘘でフランシスを騙して束縛しようとする彼女、これからどうなるんでしょうか?
次回、絶望のナージャは遂に・・

Novel&Message by 千菊丸さん


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