百合と薔薇

第28話:潜入


作:千菊丸さん
オーストリア・ウィーンにある男色家専門の売春宿『柊』で、ハプスブルク財閥の社員が変死した。
解剖の結果、麻薬の過剰摂取による心臓発作が死因とわかり、腕には注射痕が見つかった。
ことの真相を確かめるため、社長であるルドルフはある作戦を実行した。

ウィーンの歓楽街は、夜になると女を買う輩、または男色家が集う。
『柊』は、その一角で一際目立つ、高級男色専門売春宿である。
ルドルフは田舎から来た孤児に見えるよう、ボロをまとい、ボロボロのバッグを抱え、『柊』の裏口のドアを叩いた。
あくまでしおらしく、哀れな声を出す。
「ごめんください。誰かいませんか?」
ドアを何度か叩くと、奥からぶっきらぼうな声が返ってきた。
「誰だい?」
声と共に、40代後半とおぼしき着物を着た女性がやってきた。
この宿の女将だろう。
「うちに何か用かい?」
「あ、あの僕、ここで働きたいんですけど・・」
おどおどとした口調で言った。
ルドルフの言葉に女将はじろりと彼の方を見たが、あごをしゃくって中へ入れと手招きした。
女将と共に入った部屋には、女衒がいた。
「女将さん、こいつどこで拾ってきたんで?」
「裏にいたのさ。」
女将は女衒にぴしゃりと言うと、部屋のドアを閉めた。

2人きりになり、ルドルフは唾を呑むのをなんとかこらえた。
「ここがどういう宿かわかってんのかい?金のない女や坊主が、春を売るところだよ。」
女将はそう言うと、タバコを吸いながらルドルフの方に近寄ってきた。
「顔をよく見せな。」
そう言うと女将はルドルフの顎を上げた。
「いい顔をしているじゃないか。売れっ子になるよ。」
女将は電話をかけた。
「新人が来たよ。身体を洗っておあげ。」
ルドルフは部屋を出ると、下働きの女達が彼を引っ張り、浴室へと連れて行った。
身体を洗い、化粧を施され、新品の着物を着付けされたルドルフは、見違えるように美しくなった。
女将は、着飾ったルドルフを見ると、満足そうに見た。
「上玉だね、これから売れっ子になるよ。」
ルドルフは『リア』という源氏名をもらい、『柊』での変死事件の潜入調査を行った。
ルドルフが『柊』で働きだして4日ほど。
陰間仲間の部屋に忍び込んだルドルフは、以前から気になっていた引き出しを開けてみた。
そこには、注射針があった。
(間違いない。あいつは、この宿で陰間に・・)
ルドルフが疑惑を確信へと変えているとき、部屋の外で足音がした。









これまでのとうってかわって、サスペンスを書いてみました。
ハプスブルク財閥の社員が売春宿で変死。
彼の死に疑いを持った社長のルドルフは、売春宿で陰間になりすまして調査することに。
売春宿は、建物は西洋のものだけど、陰間や女将さん、下働きの人はみんな着物を着ている、日本系の宿です。
遊郭のシステムとかは全然わからないので適当に書いてます。
みなさま、そこのところは目をつぶっていただいて・・。

Novel&Message by 千菊丸さん


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