百合と薔薇

第26話:悪女達の陰謀


作:千菊丸さん
ナージャは、フランシスと引き裂かれ、泣き暮らす日々を送っていた。
食事も喉を通らず、日に日にナージャは弱っていった。
悲嘆にくれるナージャとは対照的に、彼女の恋敵であるメリーアンはいきいきと毎日を過ごしていた。
フランシスとナージャが別れた今、自分がフランシス・ハーコートの妻となる日は近い。
「やっと、幼い頃からの夢が叶うのだわ・・。」

一方、目障りな存在がいなくなり、シュティファニーは毎日夫に嘘を吹き込んでいた。
その内容は、夫の恋人であった、アルフレートのこと。
「アルフレートは、あなたとはもうこれ以上やってはいけない、とおっしゃいましたわ。」
「アルフレートは、あなたのことはもう忘れてしまったとおっしゃっていたわ。」
夫に恋人への憎しみを植え付けるシュティファニー。
この世でかけがえのないものを失ったルドルフは、その悲しみを憎しみへと変えていった。

メリーアンとシュティファニー。
2人の悪女が出会ったのは、ウィーンの高級ホテル。
ある夜、ハプスブルク財閥創立120周年のパーティーが開かれた。
オーストリアのみならず、ヨーロッパ中の貴族がハプスブルク財閥の未来を祝いに来た。
シュティファニーは社長夫人として鼻高々だった。
シュティファニーは、夫と話したかったが、縁談が決まった時からシュティファニーを嫌っていたルドルフは、従兄弟や友人達と話していて、彼女のことなどかまいもしなかった。

高慢な性格のシュティファニーは、ヨーロッパの社交界から嫌われていた。
ブリュッセルから嫁いできて4年、彼女には親しい友人が1人もいなかった。
華やかなパーティー会場が地獄のように見える。
帰ろうかと、入口に向かったとき、スタイルのいい美女が目に入った。
美女と目が合うと、彼女は微笑みを浮かべてシュティファニーの方に歩いてきた。
「シュティファニー様かしら?はじめまして、わたくしはメリーアン・ハミルトンともうしますわ。」
「あら、ファッションモデルの。わたし、あなたが出ているショーは必ず見ていますのよ。」
シュティファニーは初めて会話らしいものができた。
「ここではなんですから、静かなところでお話しませんこと?」
「ええ、よろしくてよ。」
シュティファニーはチラッと夫の方を見た。ルドルフは相変わらず談笑している。
ホテルの中にあるアール・デコ様式のインテリアのカフェで、メリーアンとシュティファニーはにこやかに談笑していた。
「ねぇ、ご存知?ハーコート財閥のご子息と、プレミンジャー財閥の孫娘の縁談が、なしになったっていうお話。」
突然メリーアンがそう言ってシュティファニーに話を振ってきた。
「ええ、週刊誌で読みましたわ。プレミンジャー財閥の孫娘、そうとう曲者らしいですわね。なんでも、たくさんの男を手玉に取ったとか・・・」
「その子は私の幼なじみまでたぶらかしたのですわ。」
メリーアンの声は、怒りに満ちていた。
「私はその方とは幼い頃から知っておりましたわ。私はその方と結婚したいと思っておりますのよ・・それなのに、あの泥棒猫・ナージャが、私のフランシスを横取りしたんですわ!」
ナージャ、という名前を聞いて、シュティファニーの脳裏にある光景が甦った。
4年前、ブリュッセルで公演している旅芸人の踊り子を罵倒した後、その踊り子に逆に罵られ、平手を打たれたのだ。
「ナージャ・・あの小娘が貴族ですって・・」
シュティファニーのつぶやきに、にやりとほくそ笑むメリーアン。
「あなたもナージャのことを知っていらっしゃるのね?」
「ええ、私に平手を打った生意気な小娘を忘れるわけがなくてよ。」
シュティファニーはそう言ってカップを乱暴に置いた。
(この女、利用できるわ。)
メリーアンは最高のカモを見つけた。
最大限に利用できる人間を。
心の内を悟られまいと、シュティファニーに向けて見せかけの笑顔を浮かべる。
「ねぇ、私達手を組まないこと?ナージャを殺すために。」
シュティファニーは一瞬戸惑ったが、あの平手の音と痛さを思い出した。
「ええ。」
しめたわ。
「そう、じゃぁ、今から考えましょうか?」

性悪女と、陰謀女。
2人の悪女の陰謀が、幕を開けた−。









とうとうメリーアン(陰謀女)とシュティファニー(性悪女)が出会ってしまいました。
メリーアンはひどい女ですが、シュティファニーは最低で、ひどい女です。

メリーアンはシュティファニーをとことん利用し尽くして捨てそうです。

次回、フランシスに引き裂かれ、悲しみに暮れたナージャの元に、キースの魔手が迫ります。

ヒロインに幸せな日々が訪れるのは、まだまだ遠いようです。

Novel&Message by 千菊丸さん


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