百合と薔薇

第20話:嫉妬の炎


作:千菊丸さん
2000年、クリスマス・イヴ前日。
ルドルフはアルフレートと休暇を過ごそうと予定していた。
「お前の誕生日を祝えなかった償いだ。」
「でも、奥様は・・?」
シュティファニーはクリスマス・イヴはルドルフと過ごしたがっていた。
「あいつは実家に帰ればいい。」
意にそぐわぬ結婚をしたルドルフは、妻に冷たかった。
「でも、ご結婚されて初めて過ごされるクリスマスですし・・」
「私が愛しているのはお前だけだ。」
ルドルフはそう言ってアルフレートの唇を奪った。
「明日の朝10時、空港で待ってる。」
そう言うと、ルドルフは去っていった。
2人のやりとりを、シュティファニーは物陰で見ていた。
怒りに震え、柱を殴った。
「許さないわ・・絶対に、あいつを殺してやる・・」
アルフレートは、荷づくりを終え、机の上に置いてあるスケッチブックを見た。
それには、夢に向かって生きる彼の作品が書かれてあった。
(休暇だけど、この前のこともあったから・・それに、リラックスした雰囲気で新しい作品ができるかもしれない。)
アルフレートは愛用のショルダーバックに、スケッチブックを入れた。

翌朝、2000年12月24日、クリスマス・イヴ。

アルフレートはホーフブルク邸を出発し、空港へと向かった。
走り去る彼の車を、シュティファニーは不気味な笑みを浮かべて見ていた。
アルフレートは空港へと向かう道すがら、浮かれていた。
ルドルフとカナダに行けるなんて、夢のようだった。
シュティファニーの手の届かないところに行けるのが、嬉しかった。

高速もそろそろ終わりだ。

もう少しで空港に着ける。

アルフレートが高速を降り、空港の駐車場へと向かった。
だが突然トラックが彼の前に突っ込んできた。
アルフレートはブレーキを踏んだが、ブレーキがきかなかった。

空気を切り裂くような摩擦音と、闇に包まれた。

約束の時間はとうに過ぎているのに、アルフレートは来ない。
嫌な予感がした。
アルフレートの携帯に何度駆けても出なかった。
やっとつながったと思ったら、留守番サービスだった。
「アルフレート、私はこれから出発する。メッセージを聞いていれば、カナダに来てくれ。待っている。」
アルフレートの事故を知らないルドルフは、悪寒を感じながら、カナダへと向かった。

時を同じくして、ウィーン国際空港に、ナージャとフランシスの姿があった。
クリスマス休暇に、2人はハーコート家の別荘があるカナダで過ごすことになった。
「嬉しいわ、あなたと2人で過ごせるなんて。」
「楽しい休暇になりそうだね。」
ナージャとフランシスは談笑して、フィンランドに向けて旅立っていった。

その頃、イタリア・ミラノの最高級ホテルのスイートで、メリーアンは1人寂しくクリスマスを過ごしていた。
「許せない・・あの2人、殺してやる・・」
ナージャとフランシスに対する激しい憎しみで、メリーアンは胸がいっぱいだった。
「わたしなのよ・・」
メリーアンはスタンドを持ち上げた。
「わたしがフランシスに愛されるはずなのよ!!」
メリーアンはスタンドを窓から投げ捨てた。
「許さない・・私をコケにした罪は重くてよ、フランシス・・」

荒れ果てた部屋には、狂気じみた笑い声がするだけだった。





−第1部 完−




『百合と薔薇』、第1部終わりました。
展開が最初書いていたのとは違ってしまって、申し訳ないです。

第2部は、ルドルフ様はアルフレートに捨てられたと思い、アルフレートに対する感情は深い愛から、激しい憎しみへと変わってゆく・・。
メリーアンは、ナージャとフランシスの後を追いカナダへと向かい、ナージャに危害を加えようと企む。

アルフレートが事故を起こしたのは、シュティファニーがブレーキに細工をしたからでした。
恐い女・・。

第2部は21話〜33話まで。

人物設定も変えます。

Novel&Message by 千菊丸さん


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