|
ナージャ達ダンデライオン一座は、パリを後にし、ベルギー・ブリュッセルへと向かった。 パリでのフランシスとの思い出を、ナージャは胸に刻み込んだ。 それと同時に、ローズマリーとメリーアンのことが脳裏を掠める。 憎しみに歪んだ女2人の感情。 それはすべて、自分に向けられているのだと、パリを離れ、ナージャは初めて気づいたのだ。 (私は一体、何をしたというの・・) 気づいたことは、もうひとつ。 ローズマリーとは、もう友達にはなれない。 ナージャの複雑な想いを乗せて、からくり自動車はブリュッセルへと到着した。 ブリュッセルでのナージャの踊りは好評で、舞姫ナージャの株は日に日に上がっていった。 だが、そんな喜びをぶちこわす女が現れたのは、公演5日目の午後のことだった。 いつものようにナージャが踊っていると、群衆の後ろに高級車が止まり、中から出てきた令嬢がナージャに向かって毒を吐いた。 「よくもそんな下手くそな踊りが披露できるものね!」 罵声を浴びせられた瞬間ナージャの表情は凍り付いたが、踊りはそのまま続けた。 群衆はその令嬢を冷たい目で見た。 公演が終わると、ナージャはベッドに突っ伏して泣き始めた。 「ひどいわ、へたくそだなんて・・毎日一生懸命練習してるのに・・」 「あんな女、気にすんなよ。ナージャの踊りは最高だよ。」 ケンノスケがそう言ってナージャにハンカチを差し出した。 その後、令嬢は公演の旅に来ては、罵声を浴びせた。 「あんな客は初めて見たぜ。俺らに怨みでもあんのか?」 団長はそう言って眉をひそめた。 「全く、嫌な客もいるものだわ。」 シルヴィはそう言って、団長に熱々のコーヒーを入れた。 「一体どこの令嬢だろうな?あんな態度デカイやつ、フェルディナンドよりも最悪だよ。」 ダンデライオン一座が以前スペインで公演していた時に、ゴンザレス財閥の息子・フェルディナンドが一座に言いがかりをつけ、騒動になったことがあった。 「世の中には嫌なヤツがいるもんさ。そう目くじらいちいち立ててたら、きりがないよ。」 オババはそう言うと、怒りまくるみんなを鎮めた。 それから、令嬢は突然、公演に来なくなった。 ナージャ達は、令嬢に公演を妨害されないとわかり、ほっとしていた。 だが、災難は終わらなかった。 ブリュッセルでの公演が終わりに近づいてきたある日、ナージャはおつかいに出ていた。 「う〜、重いわ。」 たくさんの荷物を抱えながら、ナージャは帰路についていた。 その時、曲がり角から急に女が出てきた。 ドンッ!! 「危ないじゃない!」 ナージャは上手く避けたものの、女は怒りまくっていた。 「すいません・・」 「あなた、もうちょっと周りを見れないの?」 ナージャが謝ろうと顔を上げると、そこには公演を妨害していた令嬢がいた。ナージャの中に、令嬢に対する怒りが湧いた。 「そちらが先にぶつかってきたんじゃないんですか?」 「なんですって?あら、あなたあの一座で公演していた踊り子ね。」 令嬢は、見下すような目つきでナージャを見た。 「あなたは、一体何の目的があって、うちの公演を邪魔するんですか?私達に何の恨みがあるんですか?」 「恨みですって?」 令嬢はナージャをにらんだ。 「あんなもの、往来の真ん中で見せないで欲しいわ。吐き気がするのよ!!」 ナージャの怒りが爆発し、令嬢の頬に平手を打った。 「私達はお客さんによろこんで貰おうと、一生懸命練習して、公演しているのよ!そんな私達の努力を知ろうともしないで、見下しているあなたは最低の人間よ!」 走り去ったナージャの後ろ姿を、シュティファニーは憎々しげに睨んだ。 「よくも私を馬鹿にしたわね・・見ていらっしゃい、あんたを絶対、潰してやる・・」 シュティファニー、ダンデライオン一座の公演を妨害する。 どこまで性悪なんだかこの女は・・。 自分を罵ったナージャに対して逆恨みし、激しい憎しみを抱くシュティファニー。 次回、メリーアンはフランシスに告白するが、フランシスは・・。 Novel&Message by 千菊丸さん |