百合と薔薇

第14話:ブリュッセルでの災難


作:千菊丸さん
ナージャ達ダンデライオン一座は、パリを後にし、ベルギー・ブリュッセルへと向かった。
パリでのフランシスとの思い出を、ナージャは胸に刻み込んだ。
それと同時に、ローズマリーとメリーアンのことが脳裏を掠める。
憎しみに歪んだ女2人の感情。
それはすべて、自分に向けられているのだと、パリを離れ、ナージャは初めて気づいたのだ。
(私は一体、何をしたというの・・)
気づいたことは、もうひとつ。

ローズマリーとは、もう友達にはなれない。

ナージャの複雑な想いを乗せて、からくり自動車はブリュッセルへと到着した。

ブリュッセルでのナージャの踊りは好評で、舞姫ナージャの株は日に日に上がっていった。
だが、そんな喜びをぶちこわす女が現れたのは、公演5日目の午後のことだった。

いつものようにナージャが踊っていると、群衆の後ろに高級車が止まり、中から出てきた令嬢がナージャに向かって毒を吐いた。
「よくもそんな下手くそな踊りが披露できるものね!」
罵声を浴びせられた瞬間ナージャの表情は凍り付いたが、踊りはそのまま続けた。
群衆はその令嬢を冷たい目で見た。
公演が終わると、ナージャはベッドに突っ伏して泣き始めた。
「ひどいわ、へたくそだなんて・・毎日一生懸命練習してるのに・・」
「あんな女、気にすんなよ。ナージャの踊りは最高だよ。」
ケンノスケがそう言ってナージャにハンカチを差し出した。

その後、令嬢は公演の旅に来ては、罵声を浴びせた。
「あんな客は初めて見たぜ。俺らに怨みでもあんのか?」
団長はそう言って眉をひそめた。
「全く、嫌な客もいるものだわ。」
シルヴィはそう言って、団長に熱々のコーヒーを入れた。
「一体どこの令嬢だろうな?あんな態度デカイやつ、フェルディナンドよりも最悪だよ。」

ダンデライオン一座が以前スペインで公演していた時に、ゴンザレス財閥の息子・フェルディナンドが一座に言いがかりをつけ、騒動になったことがあった。

「世の中には嫌なヤツがいるもんさ。そう目くじらいちいち立ててたら、きりがないよ。」
オババはそう言うと、怒りまくるみんなを鎮めた。

それから、令嬢は突然、公演に来なくなった。
ナージャ達は、令嬢に公演を妨害されないとわかり、ほっとしていた。

だが、災難は終わらなかった。
ブリュッセルでの公演が終わりに近づいてきたある日、ナージャはおつかいに出ていた。
「う〜、重いわ。」
たくさんの荷物を抱えながら、ナージャは帰路についていた。

その時、曲がり角から急に女が出てきた。

ドンッ!!

「危ないじゃない!」
ナージャは上手く避けたものの、女は怒りまくっていた。
「すいません・・」
「あなた、もうちょっと周りを見れないの?」
ナージャが謝ろうと顔を上げると、そこには公演を妨害していた令嬢がいた。ナージャの中に、令嬢に対する怒りが湧いた。
「そちらが先にぶつかってきたんじゃないんですか?」
「なんですって?あら、あなたあの一座で公演していた踊り子ね。」
令嬢は、見下すような目つきでナージャを見た。
「あなたは、一体何の目的があって、うちの公演を邪魔するんですか?私達に何の恨みがあるんですか?」
「恨みですって?」
令嬢はナージャをにらんだ。
「あんなもの、往来の真ん中で見せないで欲しいわ。吐き気がするのよ!!」
ナージャの怒りが爆発し、令嬢の頬に平手を打った。

「私達はお客さんによろこんで貰おうと、一生懸命練習して、公演しているのよ!そんな私達の努力を知ろうともしないで、見下しているあなたは最低の人間よ!」
走り去ったナージャの後ろ姿を、シュティファニーは憎々しげに睨んだ。

「よくも私を馬鹿にしたわね・・見ていらっしゃい、あんたを絶対、潰してやる・・」









シュティファニー、ダンデライオン一座の公演を妨害する。
どこまで性悪なんだかこの女は・・。
自分を罵ったナージャに対して逆恨みし、激しい憎しみを抱くシュティファニー。
次回、メリーアンはフランシスに告白するが、フランシスは・・。

Novel&Message by 千菊丸さん


第13話へ戻る / 貰いモノは嬉し!へ戻る