百合と薔薇

第1話:始まり


作:千菊丸さん
1991年、春。
ウィーン・ホーフブルク邸で、2人の少年が追いかけっこをしていた。
「待ってくださいよ、ルドルフ様〜!!」
「お前なんかにつかまらないぞ!!」
鬼になっているのがホーフブルク邸で長年仕えているユリウス=フェリックスの息子で、12歳となるアルフレート。
そして逃げ回っているのがハプスブルクコンツェルンの嫡子で、9歳になるルドルフである。
ルドルフとアルフレートは、幼なじみで、いつも一緒だった。
名門財閥のオーナーである父と、世界的ピアニストである母を持つルドルフは、常に後継者としての重責を負っていた。
いつもルドルフは大人びいた表情をして、誰にも近づけない雰囲気を漂わせていた。
だが、アルフレートの前では、年相応の子どもの顔をする。

「もうっ、待ってくださいよ。」
「ふん、誰も僕をつかまえることなんかできないさ。」
無邪気に遊ぶルドルフの姿を見て、アルフレートは永遠にルドルフの傍にいようと思うのだった。
「ルドルフ、アルフレート、お昼よ!!」
追いかけっこに興じる2人に、ルドルフの姉・ジゼルが声をかけた。
「ふん、つまらないな。」
ルドルフはそう言うと、テラスの方へと歩いていった。
「もうすぐ学校が始まるし、あまりゆっくりしていられない・・つまらないな。」
そう言ったルドルフの顔には、あきらめとも、憂いともつかぬ表情が浮かんでいた。
「ルドルフ様、また追いかけっこをいたしましょう。」
アルフレートはそう言ってルドルフに微笑む。

幸せな、春の午後。
この幸せがやがて軋みをあげて崩壊することを、このとき誰が想像できようか−。









記念すべき『百合と薔薇』第1話です。
第1話はルドルフ様とアルフレートの少年時代から。
使用人の子であるアルフレートと、名門財閥の嫡子であるルドルフ様。
プロローグに引き続き、また意味不明な文章となってしまいました。

『天上の愛 地上の恋』コミックス1巻を見て、少年時代のアルフレートとルドルフ様の絡みがあんまりなかったので、まずは追いかけっこに興じる2人を書いてみました。
これから少年時代の2人のみずみずしい幸せの日々を書いていきますので。

Novel&Message by 千菊丸さん


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