|
第9話:麗景殿女御・火月懐妊 有匡は火月を抱いた。 翌朝、火月は満足げに微笑んだ。 「私の失せ物は、お兄様の愛。まだ見つかりませんの。」 それから、有匡は火月に「失せ物探し」を依頼され、毎晩麗景殿に赴くようになった。 「麗景殿の女御が、そなたを好いていると聞く。火月はうい女じゃ。優しくしてやってくれ。」 「はい、主上(おかみ)。」 毎晩麗景殿で、有匡は火月を激しく抱いた。 火月は兄に抱かれるたびに悦びの声を上げた。 (有匡様が火月様をあんなに好いていらっしゃるとは・・でももし主上にバレたら・・) 几帳越しに聞こえてくる2人の喘ぎ声を聞きながら、寿子は不安な気持ちに駆られた。 一方、火月を疎ましく思っている桐壺の女御は法師を呼び寄せた。 「お前に頼みがあるの。」 法師・文観は期待に瞳を潤ませていた。 「麗景殿女御・火月を呪殺してちょうだい。主上を奪ったあの女に、地獄の苦しみを味あわせてやるのよ。」 「御意。」 有匡と火月の関係は、後宮中が知るところとなった。 それは、桐壺の女御にも伝わった。 (しめたわ。これをネタにしてあの女を京から追い出せる。) 早速桐壺の女御は主上に有匡と火月の関係を報告した。 しかしー 「そなたは火月に嫉妬してるのじゃ。有匡が火月と通じおっているはずがなかろう。」 帝はそう言って一笑に付した。 弘徽殿の女御が、火月を心配して麗景殿にやってきた。 「あなたは主上に愛されているではないの。何故有匡様なんかと・・」 「僕は入内する気なんて初めからなかったんです。」 火月は口元を檜扇で隠しながら言った。 「僕は昔からお兄様のことが好きだった・・12年ぶりに再会して、ご成人したお兄様を見て恋心を抱きました。土御門家で優しくしてくれるお兄様のことが好きになってしまった。しまいには・・お兄様の妻になりたいと思い始めたんです。 絢子様、僕はお兄様に毎夜抱かれて、幸せなんです。 主上は素晴らしい御方だし、優しい御方です。 でも、僕はお兄様じゃなきゃだめなんです。お兄様じゃないと、僕は・・」 「そう。あなたはそんなに有匡様を想っていらっしゃるのね。」 弘徽殿の女御はそう言って帰っていった。 翌日。 火月はここ最近、体調がすぐれなかった。 「火月様、お食事ですよ。」 「ありがとう、寿子。」 そう言って火月は食事に手を伸ばそうとした。 突然激しい吐き気に襲われ、火月は両手で口元を覆った。 「火月様、もしや・・」 妊娠3ヶ月に入っていた。 (なんということ・・お兄様の子が・・僕のお腹に・・) 火月懐妊の報せを受け、帝は大層喜んだという。 火月ちゃん、有匡さんの子を妊娠する。 桐壺の女御はまだ懲りてないですね。 また呪詛でもやらかすんでしょうか。 文観が毎日念を送ってたりして・・。 弘徽殿の女御は有匡さんと火月ちゃんの関係を冷静に見つめてますね。 大人の女ってカンジかな。 帝は有匡さんと火月ちゃんの関係を疑ってません。 鈍感なのか、気づいていても知らないフリをしているだけなのかは判りませんが。 |