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第7話:親友 桐壺の女御の火月に対するいじめはますますひどくなる一方で、火月は自分の部屋に引きこもり寝込んでしまった。 (もう嫌・・宇治のお母様の邸に戻りたい・・このままお母様の元へ召されたい・・) 後宮の人間関係の複雑さ、そして女達の陰湿さに、火月は嫌気がさし、自殺まで考えるようになった。 (火月様、おかわいそうに、あんなにやつれられて・・綾香様がお亡くなりになった後、私の実家の越後で暮らした方がよかったのでは・・こんなに火月様が苦しむとは思いませんでした・・全てはこの乳母のせい・・火月様お許しを・・) 乳母の寿子は火月を京の土御門家に身を寄せずに、実家の越後で暮らした方がよかったのではと、日に日に弱っていく火月を見ながら自責の念に苛まれた。 そんなある日。 麗景殿に弘徽殿(こきでん)の女御と、藤壺の女御が火月の見舞いにやって来た。 弘徽殿の女御は後宮の中ではご意見番として一目置かれている存在で、今年27歳である。15歳の時に入内し、後宮内のことは知り尽くしている。竹を割ったような性格で、思うことははっきりと口にする。 帝からは後宮の管理を任されているほど頼りにされている。 一方藤壺の女御は火月と1日早く入内した13歳の少女。幼い頃から病弱で、物静かな性格だ。 だが琴や琵琶が得意で、帝は彼女の奏でる楽の音に心地よく耳を澄ませる程だ。 「まあ弘徽殿の女御様、藤壺の女御様・・わざわざお越しいただき、ありがとうございます。」 寿子は2人の女御に深々と頭を下げた。 「頭をお上げになって。火月様は桐壺の女御様にいじめられ寝込んでいらっしゃるとか・・」 そう言うと弘徽殿の女御は火月の部屋へと入っていった。藤壺の女御も後に続いた。 「麗景殿女御・火月様ですわね?はじめまして、私は弘徽殿の女御・絢子(あやこ)と申します。」 寝込んでいた火月は起きあがり、深々と頭を下げた。 「こちらこそ初めまして、麗景殿の女御・火月と申します。こんな見苦しいお姿をお見せして、申し訳ありません・・」 すると弘徽殿の女御は火月に優しく微笑んだ。 「いいえ、こちらこそ突然訪ねて来たんですもの。失礼なのはこちらですわ。」 弘徽殿の女御の後ろに控えていた藤壺の女御が火月に頭を下げた。 「初めまして火月様。私は藤壺の女御・鞠子(まりこ)と申します。」 そう言うと藤壺の女御は火月に頭を下げた。 火月も藤壺の女御に頭を下げた。 「ところで火月様、桐壺の女御様があなたに辛くあたっているという噂を耳に致しましたわ。」 弘徽殿の女御がお見舞いとして持ってきた水仙を活けながら言った。 「ええ・・あの方は私と会うたびに赤眼の化け猫と罵り、度々私の元を訪れては私を罵り・・」 火月はいままで溜め込んできた思いを一気に吐き出した。 「それだけではありません・・腐敗した犬の死骸を毎日投げ込まれたり、夜に帝の元へ行く度に廊下に針や汚物を撒かれたり、私が通る度に皆が陰口を叩き・・ここの女房達は毎日私の悪口を言い、休まる暇がございません。何故僕がこんな目に遭わなきゃいけないんです?何も桐壺の女御様を悪く言ったわけじゃない。桐壺の女御様に嫌がらせしたわけでもない。なのに何で女御様は僕をいじめるんです?どうして僕を目の敵にするんです?言いたいことがあったら陰でネチネチといじめないで堂々と僕に言えばいいじゃないですか!それにみんなも酷すぎるよ、桐壺の女御様が恐いからって僕をいじめて!みんな、みんな、大っ嫌いっ!」 弘徽殿の女御と藤壺の女御は火月の愚痴をただ静かに聞いていた。 「もう死にたいよ・・僕はこの世にいらない存在なんだ、僕が死んでも誰も悲しまない。死んだお母様の元に行きたいよ・・」 「・・辛かったのですね、いままで溜め込んで溜め込んで・・これからは私たちがあなたを支えますからね。」 「火月様、私が箏の音であなたを慰めますわ。私にできる唯一のことですけど、火月様のためになるのなら・・」 弘徽殿の女御に赤ん坊のように優しく抱かれながら、火月は言った。 「みなさん、ありがとう・・私、今幸せですわ・・私を気にかけて下さる方がいることがわかって・・こんな私ですけれど、私を支えてくださいまし。」 弘徽殿の女御は火月を力強く抱きしめて言った。 「これからは嫌なことがあってももう我慢なさらないで。遠慮なさらず、私たちに吐き出してください。」 火月は弘徽殿の女御と藤壺の女御は、唯一無二の親友となった。 火月ちゃん、お見舞いにやって来た弘徽殿の女御と藤壺の女御に溜め込んできた思いを一気に吐き出す。 そして、弘徽殿の女御と藤壺の女御と親友になる。 愚痴を聞いてくれる友達がいることって大事なんですよね。 人間関係のトラブルは職場や学校、家庭などで何かしらと付いて回るモノ。 ストレスを溜め込まずに愚痴をこぼせる相手がいたら、救いになるし、気分が少し楽になります。 自分の内にストレスを溜め込まないようにするのが人間関係のトラブルに悩んだときの秘訣と、私は思っております。 |