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第6話:陰湿な嫌がらせ 火月が麗景殿の女御となって、3日も過ぎた頃。 麗景殿に仕える女房達は主である火月には口をきかなかった。 女房達は前の主である桐壺の女御を慕っており、新しく麗景殿の主となった火月のことは決して認めようとしなかった。 「桐壺の女御様はおかわいそうに。あの女の口添えで帝に麗景殿から追い出されるなんて。」 「赤眼の化け猫が帝に取り入るなど、ああ恐ろしい。」 「たいした家柄でもないくせに。」 「あの土御門家の愛人の子だからって、なんて図々しいんでしょう・・」 今日も女房達は火月の悪口を言っている。 彼女たちの陰口を火月は御簾越しに聞きながら目元に涙を溜めていた。 (僕が何をしたっていうの?なんで僕がこんなに責められなくきゃいけないの?) 「火月の悪口言うな、ブス共!!」 あまりの女房達の陰口のひどさに、火月の女童(めのわらわ)の禍蛇が怒鳴った。 「てめぇらネチネチ悪口言う暇あるんだったら手動かせよな!!」 女房達は慌てて衣擦れの音を響かせながらそれぞれの仕事に戻った。 「ったく、嫌な奴ら。火月も言い返したらいいじゃん。」 フンと鼻を鳴らしながら禍蛇が言った。 「でも、僕が桐壺の女御様をここから追い出したのは事実だから・・」 そう言うと火月は几帳の陰に引っ込んでしまった。 「火月・・」 その時、御簾越しに何かが投げられた。 火月は几帳から出て、叫んだ。 「キャァァァッ!」 それは、腐敗した犬の死骸だった。 辺り一面に強烈な腐臭が漂う。 「出てこいよ、火月に文句あるなら直接言えばいいだろ、この卑怯者!!」 袖口で口元を覆いながら禍蛇が叫んだ。 「禍蛇、いいよもう・・」 火月がいきり立つ禍蛇をなだめた。 「僕がいけないんだ・・だから黙って耐えないと・・」 犬の死骸は毎日投げ込まれた。 そして、火月が夜清涼殿に出向くたびに、廊下に針や汚物を撒かれたりした。 火月が廊下を歩くたびに、女達は檜扇で口元を隠して陰口を叩いた。 (僕がいけないんだ・・我慢しなきゃ・・) 陰湿な嫌がらせに、火月は黙って耐えた。 次第にストレスから火月は鬱になっていった。 そんなある日。 桐壺の女御が麗景殿にやって来た。 「いい気分でしょうね、いつも帝のお傍にいられて。」 「ええ、お陰様で・・」 「人を追い出してまで帝の愛を独り占めにしようとなさるなんて、なんて恐ろしい方なのかしら。」 「そんな、追い出すなんて・・」 「あら、追い出したではないの。私を清涼殿から遠い処へと追いやって、さぞかしご満足でしょう?」 桐壺の女御の言葉の一句一句が刃となって火月の胸に突き刺さる。 「ふん、帝もこんな赤眼の化け猫のどこを好いてなさるのかしら。全く物好きでいらっしゃること。」 「何だとこのクソババア!」 禍蛇が桐壺の女御に墨を投げつけた。 墨は桐壺の女御の衣を黒く汚した。 「まあ、何て口が悪い女童でしょう・・主の躾がなってないのね。」 「・・申し訳ございません。」 「主は赤眼の化け猫、女童は躾のなってない山猿・・全く、これじゃあ麗景殿の行く末が思いやられるわね。」 そう言うと桐壺の女御は言いたいことを言うとさっさと帰っていった。 火月は涙を堪えて、衣を裂けんばかりに握り締めていた。 女房達のこれみよがしな笑い声が、麗景殿に響いた。 今回は火月ちゃんが、周りの女達から陰湿な嫌がらせを受けます。 腐敗した犬の死骸を毎日投げ込まれる、清涼殿に出向くたびに、廊下に針や汚物を撒かれる、麗景殿では女房達に陰口を叩かれる・・後宮でのいじめに、火月ちゃんは黙って我慢した末に、鬱となってしまいます。 「自分さえ我慢すればいい」・・そう思って自分の内にストレスを溜め込んでいくと、体調を崩して、心が次第に病んでゆきます。 また、自分がどんなに落ち込んでいても、他人の前では無理に明るく振る舞おうとします。 そして、自分の弱さを他人に見せることを恐れて、強がります。 自分の心を封じて。 無理をして、明るく振る舞っても、自分が楽しくなかったら、それは本心じゃない。 人はみんな、強いわけじゃない。 たまには人に弱さをさらけ出してもいいじゃないのでしょうか? 我慢して我慢して、引き返せないところまで追いつめられる前に、自分の苦しみを他人にぶちまけてみればいいじゃないでしょうか? でも、それができないから、鬱はなくならないのですよね・・。 すいません、突然意味不明で生意気なことを書いてしまって。 でも、鬱は本当に深刻な問題ですよね・・この問題は社会全体で考えなければならないと、私は思っています。 ・・あとがきが長くなってすいません。 では、これで失礼致します。 |