|
第5話:帝のお気に入り 火月は桜の舞う頃に入内した。 彼女は麗景殿の女御の女房として仕えることとなった。 「よろしくお願いいたします。」 火月は主人となる女御に頭を下げた。 すると女御は、火月を品定めするような目つきで見ながら言った。 「あなたね。愛人の子のくせに、豪華なお道具類をお持ちになっている方は。」 火月の顔が一瞬、こわばった。 「主の私より目立たないでちょうだい。いいわね。」 そう言うと女御は立ち去っていった。 「火月様・・」 寿子は青ざめて立ちつくしている火月の肩を優しく支えた。 それから麗景殿の女御は火月に辛くあたった。 何かと言うと、「愛人の子のくせに」とあからさまに罵り、仲間外れにする。 火月は次第に鬱状態となり、食事を摂ることもままならなくなった。 そんなある夜。 帝が麗景殿へとやって来た。 火月ははしゃぐ女御の隅で隠れていた。 「あの子は?」 帝は隅に座っている火月に興味を抱いた。 「数日前に入内した娘ですのよ。陰陽道の大家・土御門家の愛人の子だとか・・」 麗景殿の女御の話など、帝は聞いてもいなかった。 ただ、火月の美しさに魅せられていた。 それから火月の元に、帝から大量の美しい衣が贈られた。 そして帝は、火月に麗景殿を与え、主であった麗景殿の女御を清涼殿から遠い桐壺へと追いやった。 火月は一夜にして、宮仕えの身から、麗景殿の主となった。 帝は暇さえあれば麗景殿に入り浸る程の寵愛ぶりであった。 土御門家からはスウリヤから皇子を生めとの催促の手紙が毎日来た。 火月は後宮の女達が欲する帝の寵愛を受けながらも、心穏やかではなかった。 いつも彼女の心を占めているのは、有匡だけだった。 火月ちゃん入内していじめられて鬱になるも、帝から麗景殿を与えられ、寵愛を受ける。 でも彼女の心中は穏やかではなく、心の中はいつも有匡だけが占めていた。 乳母以外誰1人打ち解ける相手もおらず、いつも1人ぼっちの火月ちゃん。 『源氏物語』の桐壺の更衣もきっと心細かったのでしょうね。 心を許せる相手が誰もいなくて。 周りから仲間外れにされて、辛かったと思う。 でも、桐壺の更衣は帝の愛があったから乗り越えられたんでしょうね。 火月ちゃんの場合は有匡さんを想うことで乗り越えているのかな・・。 では、この辺で失礼いたします。 |