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第3話:貴公子達の求婚 土御門家には、毎日10人位の貴公子達がやってくる。 彼らのお目当ては火月である。 火月は今年で15。 流れるような美しい金の髪、紅玉のような澄んだ瞳、象牙色の肌ー輝くばかりに美しい火月に、京中の貴公子達は争うように火月に結婚を申し込んだ。 中には唐渡りの衣や、南国の珊瑚など、高価な贈り物をする貴公子もいた。 だが、火月は貴公子達の求婚を全て断った。 ある日、有仁が求婚を断り続ける火月に対して尋ねた。 「なぜ、結婚しないのだ?心に決めた相手でもいるのか?」 すると火月は真剣な顔つきでこう答えた。 「私が一生添い遂げたい相手は有匡お兄様だけですわ。」 火月はいつしか有匡に恋心を抱き、結婚まで考えるようになった。 有匡も、日に日に美しくなる火月を見て彼女を抱きたいという炎のような衝動に駆られるも、それを氷のように冷たい理性で抑える毎日だった。 貴公子達は諦めず、最終的には5人の貴公子達が火月に求婚し続けた。 「まるで、『竹取物語』のようですわね。」 寿子が御簾越しで笑いながら有匡に言った。 5人の貴公子の中には、あの右大臣の息子がいた。 「火月さま、私の妻になってくだされば、金銀財宝の山をあなたに差し上げましょう。」 1人目で、豪商として名の高い父を持つ貴公子が言った。 「私、金銀財宝には興味がありませんの。」 2人目は気品漂う貴公子。 「火月様、私はあなたのために毎日歌をお詠み致しましょう。」 「私、歌は自分で詠めますわ。」 3人目は性欲ムンムンな貴公子。 「火月様、私の子どもを産んでくだされっ!賑やかな家庭をつくりましょうぞ!」 火月は露骨に嫌な顔をして言った。 「私、まだ子どものことなど考えておりませんの。」 4人目は管弦をこよなく愛する貴公子。 「火月様、私と2人で愛の音を奏でましょうぞ。」 「あなた以外の方ならよろしいですわ。」 そして5人目ー 「火月様、あなた様のお噂を聞き、ここまで参りました。けれども参る度にあなた様の兄上様に追い返されるばかり・・」 有匡はキッと右大臣の息子をねめつけた。 「火月様、あなた様の美しい金色の髪を私の指に絡ませ、その匂いを嗅ぎたいのです。どうぞ御簾を上げてください。一度でもいいからあなた様のお顔を拝見したい。」 そう言うと右大臣の息子は御簾に近寄った。 「私、強引な方は大嫌いですわ。」 「まあそう言わずに。」 右大臣の息子は火月の足首を掴み引きずり出そうとする。 それをすかさず下男達が止め、邸へと叩き出した。 「みんな頭が空っぽな男ばかり。お兄様だけが私の婿にふさわしいかたですわ。」 そう言うと、火月はサラサラと衣擦れの音をさせて、部屋の奥へと引っ込んだ。 火月ちゃん、かぐや姫のごとく、5人の貴公子達に求婚され、全員を振る。 彼女が結婚したいのは今も昔も有匡だけ。 12年の時を経て再会した兄は正に彼女の理想の男性だった。 凛々しく、誰にも媚びない、気高き最強の陰陽師となって。 有匡も美しくなった火月と再会し、少女から女性へと成長しつつある妹に恋心を抱く。 そんな2人に予期せぬ出来事が・・。 次回はいつ書けるかわかりませんが。 |