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第2話:一つ屋根の下 (宇治で暮らしている火月が、何故ここに?) 有匡は火月に抱きつかれながら疑問に思った。 「火月、来たか。」 有仁が娘を愛おしそうに見ながら言った。 「お父様!」 火月は有仁に抱きついた。 「旦那様、これからお世話になります。」 火月の乳母が有仁に頭を下げた。 翌朝。 「実は綾香とその母君が先日病で亡くなったという知らせがあった。 宇治の邸は綾香の死後すぐに売り払われ、他に身寄りがない火月を私が呼び寄せたのだ。」 有仁は一族の朝食の席で火月がここに来るようになった経緯を説明した。 「あなた、何もこの子を引き取ることはないじゃありませんか。こんな子、野垂れ死ねば良いのですわ。」 スウリヤは眉を顰めて火月を上から下までジロリと見ながら不快感を露わにする。 愛人の子など、本妻である彼女にとって目障り以外の何物以外でもない。 有匡は火月の方をチラッと見やった。 流れる金色の髪は美しく、紅玉のような紅く澄んだ瞳は涙で潤んでいる。 「母上、何もそこまで言うことはないではありませんか。火月は腹違いとはいえ、父上の御子なのですよ。」 有匡はすかさず火月を庇った。 「有匡、あなたまでそんなことを。私は認めませぬぞ。あの忌々しい女の子が我が邸の廊下を歩くなど・・考えても虫酸が走るわ。」 そう言うとスウリヤは自室へと去っていった。 有仁は妻の口の悪さにあきれながら、火月に優しく言った。 「ここは宇治の邸と思っていればいいのだよ。有匡もいることだし、判らないことはなんでも有匡に聞けば良いのだから。」 こうして、火月は有匡と同じ一つ屋根の下で暮らすこととなった。 スウリヤの火月に対する風当たりはきつかったが、火月が苛められるたびに有匡が庇ってくれた。 12年という長い歳月のせいか、初め有匡と火月はぎこちなかったが、有匡が火月の苦手な和琴を教えるたびに段々親しくなっていった。 ある日。 有匡が火月に和琴を教えているところへ、火月の乳母・寿子(としこ)がやって来た。 「火月様に会いたいとおっしゃるお方がお見えですわ。」 「私が出よう。」 有匡は火月に会いたいという男がどんな奴が見に行くことにした。 寝殿では1人の若い男が落ち着かなさげに周りをキョロキョロと見ている。 この男は宮中で何かと仲間を引き連れ騒いでいる右大臣の息子だ。 「火月の兄ですが、妹に何か御用か?」 有匡に一瞥された男は、ビクリと身を震わせながら言った。 「こ、これを火月様にお渡しください。」 男は有匡に文を渡すと逃げるように去っていった。 有匡は男の文を見た。 『あなた様の光り輝く金髪は、私の心を捉えて離れません。どうぞ私の妻となって下さい。』 有匡は文を破り捨てた。 第2話です。 母と祖母が死んで宇治の邸が売り払われ、身よりがなく京の土御門家で暮らすこととなった火月ちゃん。 妹との12年ぶりの再会に驚く有匡さん。 はじめはぎこちなかったけれど、段々親しくなっていく2人。 再会シーンが少し失敗してしまったので、これからは有匡さんと火月ちゃんの関係が深くなる過程を書いていこうと思っております。 では、この辺で失礼いたします。 |